米政府系シンクタンクであるランド研究所が、『中国との戦争(War with China- Thinking Through the Unthinkable)』という報告書を最近出版したので読んでみた。最後のリコメンデーションで最も印象に残ったのは「中国からの重要物資への依存をできるだけ少なくする」という指摘である。
2010年に沖縄県の尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に体当たりした中国漁船の船長を拘束した後、中国がレアアース(希土類)の対日輸出を制限した苦い経験を持っている日本としても、この指摘は深刻に受け止めなければならない。
2005年前後にも、日本がオーストラリアからレアアースを輸入しようとした際、自国で大量に産出するにもかかわらず中国が事前にレアアースを買い占めてしまったことがある。
中国は貿易の相互依存関係を戦略兵器として使おうとしている。2010年に人権・民主活動家の劉暁波氏がノーベル平和賞を受賞者した際も、中国は選考委員会が置かれているノルウエーからの鮭を輸入制限している。2012年に南シナ海のスカボロー礁をめぐってフィリピンと対立した時には、フィリピン産のバナナを輸入制限した。
これらのルーツは『孫子の兵法』九地篇第十一にある「先ず其の愛する所を奪わば、即ち聴かん(敵の大切にしているものを奪えば、敵を意のままに動かすことができる)」にあると思われるが、近年では1999年に2人の人民解放軍大佐が共著で出版した『超限戦』の第2章に「貿易戦」が記述されている。
日本の排他的経済水域(EEZ)にある南鳥島沖の深海底ではレアアースを含む大量のレアメタル(希少金属)の埋蔵が確認されている。“燃える氷”とも表現されるメタンハイドレートを含め、海底資源は莫大な採掘コストを要するなど課題は多いが、日本は全力を挙げて開発すべきだろう。
南シナ海で中国に人工島をつくられ、中東からのエネルギー海上輸送路の首根っこを押さえられた格好の日本は、エネルギー輸入源を同盟国米国産のシェールオイルにシフトすべき時ではないか。
昨年の今頃、シンガポールで行われたアジア国際戦略研究所主催の「海上安全保障と海洋エネルギー貿易」に関する国際会議に出席した。その時の主たるテーマはシェールガス革命によって中東エネルギー輸入からの脱却にあったのだが、我が国ではこの問題に対する関心が極めて低い。
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