私は初めての憲法改正にあたり、憲法9条の一項と二項を分離し、二項のみを改正して自衛隊の存在を憲法に明記すべきという提案をしている。
すでに産経新聞の正論欄コラム(8月16日付)に「自衛隊を憲法に明記する発議を」と題する拙文を寄稿し、「憲法の平和主義と軍の保持が『並存』するのは世界の常識だ」と述べた。そこでは、憲法9条一項の平和主義規定は、実は日本国憲法の特徴ではなく、国連憲章と世界の多くの国の憲法と共通するが、二項の戦力不保持規定は世界の常識に反するとして、イタリア憲法やフィリピン憲法が「国際紛争を解決する手段としての戦争放棄」条項と国軍保持条項を並存させていることなどを指摘した上で、国民の大多数が支持している自衛隊の存在を憲法に明記する国民運動を提案した。
9月7日付の朝日新聞が驚くべき世論調査結果を発表した。それによると、憲法改正について「賛成」「どちらかと言えば賛成」が42%、「どちらとも言えない」が33%、「どちらかと言えば反対」「反対」が25%だった。賛成派が最多だったのだ。その上、改正賛成と回答した42%に対し、改憲すべき項目を選択(複数回答)させたところ、「自衛隊または国防軍の保持を明記」で57%。次いで「集団的自衛権の保持を明記」が49%、「緊急事態に関する条項を新設」が43%、「プライバシー権を新設」は22%、「環境権を新設」は19%にとどまった。
朝日の調査でも改憲派が4割以上で、反対派は3割を切っている。その上、改憲派の6割近く、全体でも24%が「自衛隊または国防軍の保持を明記」を支持している。改憲運動は国軍保持明記から逃げてはならない。朝日の調査でさえ、改憲派が第一に求めるのは、環境権や緊急事態でなく、「自衛隊または国防軍の保持を明記」だったのだ。
実施してほしい世論調査がある。「自衛隊の存在を憲法に明記すること」の賛否を問う調査だ。憲法の平和主義と自衛隊の存在は矛盾せず共存している。憲法に自衛隊の存在を規定する条文がないということを知らない国民も多いのではないか。ぜひ、自衛隊を憲法に明記すべきかどうか、という設問調査を実施してほしい。
いまや国民の9割以上が自衛隊の存在を支持している。憲法の平和主義を支持している国民もやはりその程度はいるだろう。左翼護憲派が9条の会をつくり、憲法の平和主義を守れという政治運動をしているのは、後者を自派に引き込もうという戦略からだ。だからこそ、改憲派は9条の一項と二項を分離して、一項の平和主義は変える必要はないが、自衛隊の存在と矛盾する二項を改正して自衛隊・国軍を憲法に明記しよう、それをしないで命がけの任務を自衛隊にさせていることは失礼だという運動をすべきなのだ。自衛隊を支持する9割の国民を改憲賛成に導くことこそ、憲法改正に勝利する道だと提言したい。
国基研ろんだん
- 2024.10.01
- 「高市氏は靖国参拝を公言して負けた」論に思う 西岡力(麗澤大学特任教授)
- 2024.10.01
- 総裁選で変わらぬメディアの対応 石川弘修(国基研企画委員)
- 2024.09.30
- 世界に広がる印僑ネットワーク 近藤正規(国際基督教大学上級准教授)
- 2024.09.30
- 米中「相互確証破壊」時代の幕開けか―中国ICBM発射 中川真紀(国基研研究員)
- 2024.09.24
- 景気回復を条件に金銭解雇を認めよ 本田悦朗(元内閣官房参与)
- 2024.09.24
- 「非軍」でクアッドの海保相互運用に対応できるのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
- 2024.09.24
- 脅かされる韓国の言論の自由 西岡力(麗澤大学特任教授)
- 2024.09.09
- 南シナ海での中比衝突の背景 中川真紀(国基研研究員)
- 2024.09.02
- ウクライナ軍の越境攻撃は戦争の行方を変えるか 岩田清文(元陸上幕僚長)
- 2024.09.02
- 敦賀2号機の再稼働拒否がもたらす負の遺産―今こそ必要な規制委改革 滝波宏文(参院議員)