2018年12月の記事一覧
海自機を訓練標的にレーダー照射か 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
12月17日の「ろんだん」で「対日関係を悪化させる韓国側の行為がエスカレート」と書いたばかりだが、その直後の20日には、韓国艦が海上自衛隊の哨戒機P-1へ射撃管制用レーダーを照射する事件が日本海で生起した。ミサイル搭載護衛艦「たちかぜ」の砲術士(Fire Control Officer:射撃管制士)として勤務した経験から直感的に言えることは、韓国艦は目標追尾訓練を行っていたのではないか、というこ...
相変わらず皮相なNHKの「不法移民」報道 島田洋一(福井県立大学教授)
NHKのアメリカ報道の不見識と偽善性については、これまでの「ろんだん」でもしばしば指摘してきたが、2018年12月16日夜の「7時のニュース」がトップで扱った「移民の7歳少女 アメリカで拘束後に死亡」も呆れざるを得ない内容だった。まるで米当局が殺したと言わんばかりの構成で、何でもトランプ批判に結びつける姿勢も幼稚なほどの安易さであった。 ●少女の死をトランプ批判に 悪しき見本として文...
米国の報復を恐れる中国 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米中貿易戦の真っ只中、18日に行われた中国の改革開放40周年記念式典の演説で習近平国家主席は「覇権主義と強権に反対する」と述べたが、中国こそ覇権主義、強権国家ではないか。 ●弱い者には強気に 中国の通信機器最大手ファーウエイの副会長兼最高財務責任者がカナダで拘束された事件の直後、中国在住のカナダ人2名が拘束された。中国側の報復であろう。3人目が拘束されたとする情報もある。今回の身柄拘...
防衛大綱を画餅に終わらせるな 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
今後5年間の防衛計画を決める大綱と中期防衛力整備計画が18日、閣議決定された。大綱では「多次元統合防衛力」が謳われているが、統合幕僚学校長を経験した筆者に言わせてもらえるなら、陸海空それぞれの専門的基盤があって初めて有効な統合が具現化する。のっぺりとした紫色(統合色)の軍人をいくら育成しても有効な統合にはつながらない。 ●人材確保にさらなる改善必要 中国人民解放軍は、陸海空戦で米国に...
日本の防衛費は韓国に抜かれる 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
2019~23年度の中期防衛力整備計画(中期防)が18日にも閣議決定される。予算総額は過去最大の27兆4700億円。これに対して多すぎるとの批判があるが、次期中期防の期間中には韓国の国防費に抜かれる可能性が大きいことを指摘したい。 ●研究開発費では既に後塵拝す 本年度の日本の防衛費は5兆1911億円で、来年度は5兆3千億円程度になると思われるが、これに対し韓国の防衛費は日本円で約4兆...
與敵罪と外患罪で告発された文在寅 洪熒(元駐日韓国公使)
韓国の文在寅政権は主体思想に立つ革命政権だ。この革命政権の目標は「反米・親中の南北連邦制国家」をつくることだ。文在寅と金正恩による3回の首脳会談と合意は、国際社会に向けた、北朝鮮の非核化回避と「社会主義連邦国家」樹立の宣言だ。 文在寅は9月に平壌を訪問した際、同市内の「5.1競技場」で演説し、「金正恩委員長と私は、8000万同胞の手を固く結び、新たな祖国を作っていく」と述べた。全世界に向けて...
ファーウェイ問題で切実感乏しい日本 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
中国の通信機器大手ファーウェイの孟晩舟CFO(最高財務責任者)が、メキシコに向かう経由地のカナダ・バンクーバーの空港で米政府の要請により逮捕された。ある情報筋によれば、ことし既に対イラン・北朝鮮との取引で制裁措置を受けた同じ中国通信大手のZTEが罰金を課せられた際、司法取引で「ファーウェイも同じことを行なっている」と情報提供したことによるらしい。ファーウェイとZTEはライバル企業ではあるが、元は...
国際司法への提訴は万能ではない 島田洋一(福井県立大学教授)
日本企業に戦時朝鮮人労働者への賠償支払いを命ずる判決が韓国で相次いでいる。これに対し、国際裁判に訴えるべきであり、日本の勝利は間違いないとの声が政府内外で聞かれる。しかし、国際司法の場に持ち出す上では慎重な検討も必要だ。 外務省からは、政治家に対し次のようなレクチャーも行われているらしい。 ≪2014年にオーストラリアが日本を国際捕鯨取締条約違反で訴えた裁判で、国際司法裁判所(ICJ)は...
米国の強硬姿勢は中国に通じるか 大岩雄次郎(東京国際大学教授)
トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は12月1日、ブエノスアイレスでの首脳会談で、90日間の交渉継続を条件に「貿易戦争」を一時休止し、追加関税の25%への引き上げを当面見送ることで合意した。 ただ、この合意は貿易戦争自体の収拾ではなく、当面、現状に留めるだけのものである。共同声明には至らず、米中が個別に発表した声明で中国は90日間の交渉期限にすら言及せず、米国は「1つの中国」政策に触れなか...
WSJのゴーン取調べ批判は正しくない 髙池勝彦(弁護士)
ゴーン前日産会長逮捕について、新聞や週刊誌で様々なことが報道されてゐる。海外でも高い関心を呼んだらしく、いくつかの論評がある。その中で、ゴーン容疑者の逮捕拘留などに対して批判的な論評があるので、それについて述べたい。 代表的なものは、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の11月27日付の社説であるが、これは日本の刑事司法に対する公平な論評とは思へない。 社説は次のように述べる。...
ロシアのウクライナ艦船拿捕は国際法違反 黒澤聖二(国基研事務局長)
クリミア半島の付け根にあたるケルチ海峡で11月25日、ロシアの警備艇がウクライナ艦船を攻撃し拿捕した。報道によると、3隻のウクライナ艦船が黒海からアゾフ海に向けケルチ海峡を通過しようとした際、ロシアの警備艇から体当たりで通峡を妨害され、破損した。ウクライナ艦船は後退するところを砲撃されて数名が負傷、艦船は拿捕され、乗員も連行されたという。 事件は現在なお進行中で、双方の主張は真っ向から対立し...