公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2018.12.10 (月) 印刷する

與敵罪と外患罪で告発された文在寅 洪熒(元駐日韓国公使)

 韓国の文在寅政権は主体思想に立つ革命政権だ。この革命政権の目標は「反米・親中の南北連邦制国家」をつくることだ。文在寅と金正恩による3回の首脳会談と合意は、国際社会に向けた、北朝鮮の非核化回避と「社会主義連邦国家」樹立の宣言だ。
 文在寅は9月に平壌を訪問した際、同市内の「5.1競技場」で演説し、「金正恩委員長と私は、8000万同胞の手を固く結び、新たな祖国を作っていく」と述べた。全世界に向けて放送された演説がこれを証明する。

 ●憲法無視の主体思想政権
 文政権は金正恩体制との南北連邦制実現に向け、社会主義憲法への改憲に失敗するや、連邦制推進に障害となる自由民主勢力を積弊とみなして、大々的な弾圧、粛清を進めている。全体主義独裁だ。
 この主体思想派政権は法律と憲法を無視し、実質的に連邦制を実現する挙に出ている。すでに公安・情報機関を無力化し、軍の武装解除を本格的に進めている。武装解除に向けた具体的措置が平壌で文在寅が締結した「9.19軍事分野合意書」だ。
 この合意は、まるで敗戦国の降伏文書のような内容だ。つまり、陸軍中心の北の軍事力を制圧するため、韓米同盟が発展させてきた空軍と海軍力、情報力を一方的に削減、制限するというものだ。韓国軍の対北反撃力はもちろん、警戒と監視、偵察や早期警報能力などを総体的に制約、除去する内容になっている。
 「9.19軍事分野合意書」を南北の緊張緩和策として宣伝するイベントが11月30日までに完了した。南北が試験的に撤去すると合意した非武装地帯(DMZ)内の監視所(GP)各10か所の破壊、それと朝鮮戦争での韓国側戦死者の共同遺骨発掘を名目にした「矢じり高地」(江原道・鉄原)での地雷撤去作業である。

 ●韓米同盟をサボタージュ
 ところが、金正恩は非核化どころか軍民に準戦時態勢を敷き、対南サイバー攻撃を続け、全面奇襲攻撃態勢を強化している。そして文在寅反逆政権は、この北朝鮮に内応し、韓国の防御態勢を崩している。
 文政権は3,522億ウォン(約350億円)を投じて、2021年までに鉄柵などの軍事施設8,299カ所を撤去する予定だ。主体思想派政権は韓米同盟をサボタージュし、韓米連合司令部まで麻痺させている。
 北朝鮮の核除去と北の脅威に対処する戦略において、韓米はすでに共助が不可能なほど摩擦が深まっている。米国の対北非核化戦略は、トランプ政権になって、以前とは根本的に変わった。米国は物理的に北を制圧する準備を進め、中国との「冷戦」にも、北の非核化達成の目標も含まれている。

 ●検察と司法は政権の走狗
 文政権は南北連邦制を誘引するため、自らの武装解除にも余念がない。米国が強く反対する北の鉄道と道路の近代化を支援し、韓国との接続を進めている。この事業には鉄道路線の2つだけで韓国の国防費の2年分以上の予算が必要だ。
 韓国の保守派(自由民主勢力)は、憲法が禁じる南北連邦制へと暴走する主思派反逆勢力打倒に出ている。保守派は、南北軍事合意の翌日、文在寅を與敵罪で告発した。與敵罪は刑法93条で規定され、「敵国と力を合わせて大韓民国に抗敵する者は死刑に処する」となっている。韓国で処罰が唯一死刑だけという重犯罪だ。
 すでに何千人もの市民がこの與敵罪告発状に署名している。予備役軍人たちは文在寅を外患罪で追加告発した。だが検察と司法は文政権の走狗となり、「積弊清算」として数多くの政治犯(右派)の逮捕、粛清を続けている。韓国は内戦中だ。