2019年6月の記事一覧
台湾総統選の基軸はあくまで自由と民主 蔡明耀(台北駐日経済文化代表処副代表)
台湾は2020年1月11日、総統選と立法院(国会)選を同時に行う予定だが、東アジア情勢の急激な変化と中国からの全方位の脅威と圧力にさらされているなかで、その結果は全世界に注目されており、台湾自身の未来をも左右すると思われる。 振り返ってみれば、台湾は1947年に制定された中華民国憲法を改正し、1996年から総統が国民による直接投票で選出されることになった。李登輝氏は初の民選総統で、2000年...
【韓国情勢】左派検事を検事総長にした文在寅大統領 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)
6月17日、文在寅大統領は7月24日で2年の任期が満了となる文武一(ムン・ムイル)検事総長の後任として、尹錫悦(ユン・ソクヨル)ソウル中央地検長(検事正)を指名した。高検検事長を経ていない地検長からの検事総長起用はこれまでにない異例の人事だ。検事総長は大統領が指名し、国会の公聴会の意見を聞いた上で大統領が任命する。公聴会の同意は必要ない。 尹地検長は1979年ソウル大学に入学し、在学中に光州...
安倍首相のイラン訪問に思う 石﨑青也(元中東協力センター常務理事)
中東の大国イランと米国の対立で軍事的に緊迫する中、6月12日、安倍晋三首相がイランを訪問し、仲介役としてロウハニ大統領、最高指導者アリ・ハメネイ師と相次いで会談した。石油会社の役員だった亡父、石﨑重郎も今から66年前の1953年8月、英米の支援を受けたクーデターでモサデク政権が崩壊した直後、石油資源確保のためテヘランを訪問し、日本政府の意向も体して地下に潜った最高指導者アヤトラ・カシアニ師に会見...
武力行使はもたらす結果も考慮し慎重に 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
報道によれば、トランプ米大統領は、無人偵察機の撃墜に対する報復としてイランのレーダー施設等3カ所に対する攻撃を承認したものの、国防総省の将官が「攻撃によるイラン人死者は約150名」としたところ「(無人機を失ったことに)比例した反撃にはならない」として攻撃10分前に撤回したとされている。 敢えて言えば、報復の連鎖によって米国が中東に足を取られれば、結果として中国を利するという事をも考慮して攻撃...
政府は自衛隊のホルムズ派遣の備えを 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
日本の海運会社が運行するケミカルタンカー「コクカ・カレイジャス」が13日、ホルムズ海峡近くのオマーン湾で攻撃を受け、船体が大きく損傷した。実は、日本のタンカーが同海峡で攻撃を受けたのはこれが初めてではない。2010年7月にも商船三井保有の大型原油タンカーM.STARが吸着機雷による攻撃を受けている。この時は、イスラム教シーア派のイランと対抗するスンニー派のアルカイダ関連テログループが犯行声明を出...
冷静な議論必要な「2000万円不足」 大岩雄次郎(国基研企画委員兼研究員)
またもや年金問題が政争の具にされている。金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日)を巡る、いわゆる「年金2000万円不足」騒動である。 報告書内容を真正面から論じることなく、野党は、「安心詐欺」「年金破綻」と煽り、政府も報告書の撤回要求や受け取り拒否など火に油を注ぐが如くの不適切な対応で混乱を一層加速させた。 政府も野党も国民に伝える...
中国人学生へのビザ発給甘すぎないか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米国が科学技術系中国人大学(院)生や学術研究者のビザを拒否したり、在留期間を大幅に制限したりし始めて以来、その分、逆にこれまで中国人学生のビザ発給を緩和してきた日本の科学技術系大学に大挙して押し寄せているという。東京工業大学のイノベーション科学系教授から聞いた。 ●米国から日本へ委託研究が拡大 同教授によれば、中国が国産だと主張して製品化している革新的技術分野には、実は日本の科学技...
一時的と言えぬ中露の「政略結婚」 遠藤良介(産経新聞論説委員・前モスクワ支局長)
中国の習近平国家主席が5~7日にロシアを訪問し、中露の結束を誇示した。米中貿易戦争の深まりとともに、中露と米国が対峙する構図はいっそう強固になりつつある。中露の関係を一時的な「蜜月」と考え、日本が両国間にくさびを打ち込めると考えるのは楽観的にすぎる。 ●ロシア抱き込みたい中国 両首脳は5日、モスクワのクレムリンで首脳会談を行い、共同声明を発表。次いでプーチン大統領の故郷であるサンクト...
【韓国情勢】保守勢力、ソウルで慰安婦像反対集会 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)
6月5日、ソウル中心部で差別主義的反日に反対する韓国の良識派保守勢力による街頭集会が開催された。主催者の一人である李宇衍(イ・ウヨン)落星台研究所研究員は、「今日の集会は反日民族主義に公然と反対する史上初めての集会である」とあいさつした。 ここに当日、朗読された声明文の日本語訳全文を掲載する。声明文で注目すべきところは、法を無視する暴力を行使している親北過激派労組の民労総(全国民主労働組合総...
日露対話を利用しているだけのロシア 名越健郎(拓殖大学海外事情研究所教授)
日露両国の外務・防衛閣僚会議(2プラス2)と日ロ外相会談が5月30、31の両日東京で開かれたが、双方の対立や相違点が改めて鮮明になり、進展はなかった。外相会談は6月29日に日露首脳会談を大阪で開くことを決めたが、平和条約の大筋合意を目指した日本側の当初の思惑は崩れ、進展はありそうにない。プーチン体制下での決着はますます困難になっており、対露戦略の見直しが必要だろう。 ●防衛交流の本当の狙...
懲りない中国のレアアース輸出規制 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米中貿易戦争が激化して、ついに中国は米国向けレアアース輸出を制限しそうな気配である。米国は必要量の8割を中国からの輸入に頼っている。 2010年に日本が尖閣諸島の国有化を決めた際、中国は日本が必要量のほぼ全量を中国からの輸入に頼っていたレアアースの輸出を制限した。同じ年には、中国人権活動家の劉暁波にノーベル平和賞を授与した際、中国は選考委員会が置かれるノルウェーから鮭の輸入も制限した。 ...