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2019.06.27 (木) 印刷する

台湾総統選の基軸はあくまで自由と民主 蔡明耀(台北駐日経済文化代表処副代表)

 台湾は2020年1月11日、総統選と立法院(国会)選を同時に行う予定だが、東アジア情勢の急激な変化と中国からの全方位の脅威と圧力にさらされているなかで、その結果は全世界に注目されており、台湾自身の未来をも左右すると思われる。
 振り返ってみれば、台湾は1947年に制定された中華民国憲法を改正し、1996年から総統が国民による直接投票で選出されることになった。李登輝氏は初の民選総統で、2000年に国民党の分裂で民進党の陳水扁氏が当選し、はじめての政権交代となった。陳氏は2004年に再選されたが、2008年には国民党の馬英九氏が民進党の候補者を破って当選した。
 8年後、蔡英文氏が国民党の候補者を斥けて当選し、現在の民進党政権が発足した。2020年の総統選挙には蔡総統が再び民進党を代表して出馬するが、はたして再選できるかが関心を集めている。

 ●「一国二制度」に強い不信
 1996年から2016年までの総統選の結果を分析すると、「現職の総統が有利」だが、「与党が分裂すれば敗戦を喫する」「国民の総統への期待はそれだけ大きくて厳しい」という結論を得た。
 台湾の総統選挙に立候補する資格は二種類ある。政党の推薦が一般的だが、無所属で出馬する場合も有権者の1.5%にあたる28万人余りの支持者の署名があれば可能だ。
 政党については民進、国民、親民の3党が推薦資格をもっている。国民党の党予備選に参加する5人の中では韓國瑜・高雄市長と、シャープを傘下に置く鴻海精密工業の郭台銘会長が先行している。この2人を朱立倫・前新北市長らが追う展開だ。
 予備選は電話による世論調査で、より多くの支持を集めた1人が党の公認を受けて立候補できる。7月上旬にその電話調査が行われるが、いまのところ韓氏が有利な戦いを展開していると見られている。
 台北市長の柯文哲氏は無所属での出馬を検討しているようだ。9月までに正式な候補者が揃う見通しで、総統選は11月から本格戦に入る。
 2020年の総統選挙の最大の争点は①自由民主優先か経済発展優先か②台湾優先か中国優先か―。即ち、対大陸中国政策の論争だろうと思う。香港の「一国二制度」をめぐる混乱を見てもわかるように、台湾人は中国の一国二制度を受け入れない。蔡総統や国民党の予備選に参加している5人は全員が反対と表明したが、とりわけ蔡総統は固く拒絶し、断固台湾の自由民主を守ると内外に発信した。けれども、「反中か親米日か」という論争ばかり強調されることはのぞましくない。現状維持に努め、中国を余り刺激しないほうが各方面の利益につながるのではないか。

 ●焦る中国、10年内に自壊も
 2018年の地方選挙では民進党が大敗を喫し、国民党が大勝を収めた。これを前哨戦とみるなら、2020年の選挙は民進党にとってはきびしい。しかし、歴史は必ずしも前例を再現するものではない。まして、選挙までまだ半年もあるから各自努力すれば、両党いずれもチャンスはあるだろう。いずれにせよ、現時点で選挙の勝敗を予測するのは時期早尚だろう。
 中国はおそらく台湾内部への浸透工作を加速させるだろう。台湾政府への外交的孤立や軍事威嚇に加え、経済、観光などでも圧力を一層強めると予想される。香港の一国二制度の運用失敗で中国の人民や政権の安定は揺らいでいる。だから、中国は焦っている。
 中国は一日も早く香港を厳しい管理下に置き、台湾においては親中政権を育て、中国共産党革命100周年に当たる2049年までに統一を実現させようと急いでいるのだろう。
 いずれにせよ中国の独裁政権は中国人に見捨てられるだろう。早ければ10年も経たないうちに崩壊する可能性すらある。
 台湾の総統選は、結果はどうであれ、台湾人の選択として尊重されることになる。次の台湾政権も地域の繁栄と安定に貢献できるよう、自由と民主主義の灯台として、香港や中国の未来の道を明るく照らすような役割を果たすために日本及び米国と親しく、一致団結して努力していけるように期待してやまない。