米国が科学技術系中国人大学(院)生や学術研究者のビザを拒否したり、在留期間を大幅に制限したりし始めて以来、その分、逆にこれまで中国人学生のビザ発給を緩和してきた日本の科学技術系大学に大挙して押し寄せているという。東京工業大学のイノベーション科学系教授から聞いた。
●米国から日本へ委託研究が拡大
同教授によれば、中国が国産だと主張して製品化している革新的技術分野には、実は日本の科学技術系大学で研究開発されたものが多い。米国で締め出されているファーウエイは、同社の日本事業所から研究開発費を日本の理工系大学に配布して委託研究を拡大しているという。
米国では今年5月、人民解放軍から雇われたり支援を受けたりしている個人については学生用ビザや研究用ビザの発給を禁じる法案が提出された。同法案では英国やカナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった、いわゆる「ファイブ・アイズ」にも同様の施策を求めている。
●孔子学院閉鎖でも二の足踏む
一方で米国では、中国の工作活動拠点とされる孔子学院の閉鎖も加速している。2014年6月に米大学協議会が閉鎖を求める声明を出してから、9月にシカゴ大学が、10月にはペンシルバニア州立大学が閉鎖に踏み切った。2017年9月にもイリノイ大学が閉鎖に踏み切り、昨年はマルコ・ルビオ上院議員が、彼の選挙区であるフロリダ州内の4大学1高校に孔子学院を閉鎖すべきとする書簡を送った。
2018年3月、孔子学院等を外国代理人登録法の下に登録することを義務付ける「外国影響力透明化法案」が提出された後は、カリフォルニア大学がロサンゼルス校、サンタバーバラ校、デイビス校で閉鎖を決めたほか、カリフォルニアではロングビーチ州立大学、サンディエゴ州立大学、スタンフォード大学が続き、ほかにもオレゴン大学、西ケンタッキー大学、インディアナ大学、ロードアイランド大学、アリゾナ州立大学、ハワイ大学が次々に閉鎖を決めた。
しかし、日本では2010年に大阪産業大学が閉鎖した以外、孔子学院を閉じたという大学は聞いたことがない。背景には、閉鎖によって中国側の機嫌を損ねると中国人留学生が減少し、経営に差し障りがあると考えている大学が多いからではないかと推測される。
技術流出にせよ孔子学院の存続にせよ、米国の同盟国である日本がこのままで良いのか。率直な疑問を禁じ得ない。