中国の習近平国家主席が5~7日にロシアを訪問し、中露の結束を誇示した。米中貿易戦争の深まりとともに、中露と米国が対峙する構図はいっそう強固になりつつある。中露の関係を一時的な「蜜月」と考え、日本が両国間にくさびを打ち込めると考えるのは楽観的にすぎる。
●ロシア抱き込みたい中国
両首脳は5日、モスクワのクレムリンで首脳会談を行い、共同声明を発表。次いでプーチン大統領の故郷であるサンクトペテルブルクに移動して再度の首脳会談を行ったほか、同市で開催中の国際経済フォーラムに出席した。
サンクトペテルブルクでは、プーチン氏がネバ川のクルーズ船に習氏を招き、地元を案内。プーチン氏の母校、サンクトペテルブルク大では、習氏に名誉博士号を授与する式典も行われた。5月下旬のトランプ大統領の訪日を思わせる手厚い歓待だった。
中露は昨年、露極東で大規模な合同演習を行うなど、軍事面でも関係を深めている。プーチン氏は首脳会談で「両国の戦略的パートナーシップは、かつてないほどの高水準に達している」と強調した。
両首脳は北朝鮮やイランといった問題はもちろん、第5世代(5G)移動通信システムの技術でも連携することで合意。プーチン氏は、米国が排除に動く中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)について、「前代未聞のやり方で世界市場から追放されようとしている」と中国の肩を持った。
米中貿易戦争が膠着する中で、中国はロシアを抱き込んで持久戦の構えをとり始めている。ロシアも、米国の「一極支配」を打破し、国際舞台での影響力を高める上で中国と組むのが得策だと考えている。
●「中国に埋没」への警戒心
ロシアには、中国に対する潜在的な警戒心がある。今やソ連時代と立場が逆転し、中国の経済規模はロシアの8倍以上もある。広大なロシア極東部の人口が600万人にすぎないのに対し、隣接する中国の東北3省には1億3千万人が住む。うかうかしていれば、中国の人とカネに国土を席巻されかねない。
だからこそ、ロシアにとって中国との関係は死活的に重要なのである。ウクライナ介入で米欧に対露経済制裁を科されている状況では、なおさら中国に依存せざるを得ない。ロシアとしては、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」が周辺国をのみこむのを抑制する必要もある。
自民党の河井克行・総裁外交特別補佐が1月、米国での講演で「日露平和条約(交渉)には中国の脅威に共同で対処する狙いがある」と述べ、露外相の猛反発を買った。状況認識がいかに軽薄かを表していよう。
ロシアは、国際政治の「極」の一つでありたいと望んでおり、中国の弟分として埋没したくはない。将来的に、ロシアが対中関係を改める可能性は十分にある。しかし、その機は全く熟しておらず、中露の「政略結婚」は長期化すると踏んでおくべきだ。