島田教授の問題提起と富坂氏の指摘は重い課題を含んでいる。慰安婦問題の論争に20年以上取り組んできた立場から1つの点にしぼって応答したい。
富坂氏は「放っておけば風化したかもしれない問題を刺激して拡大再生産する問題だ。それだけに中韓はいつまでも自分の得意な戦線で戦いを続けられるのだ」と書いている。しかし、私の実感は「日本政府が事実関係に踏み込んだ反論をせず放っておいたので、問題が拡大再生産されていった」である。
なぜなら、慰安婦問題をめぐる国際社会の誤解は自然発生したものでなく、意図を持って日本の名誉を傷つけようとする日本、韓国、北朝鮮、中国の反日勢力が作りだしたものだからだ。相手が意図的に誤解をまき散らしている以上、こちらが放置しておくと「風化」は起きず、「悪化」一辺倒となる。
この20年以上日本政府が事実関係に関する国際広報をしなかった結果、「日本軍が戦前、韓国人女性20万人を性奴隷として戦場に強制連行し彼女らの多くを虐殺した」という誤解が国際社会に広まっている。国際反日勢力の一部は明らかに慰安婦問題を「ホロコースト」の範疇にいれることを目標として動いている。それが実現すると時効なく責任を追及される国際法の枠組みに日本が入れられてしまう。体系だった反論を国として首尾一貫して打ち出さなければ、決して慰安婦問題を口実にした日本たたきは「風化」しない。
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