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2014.12.17 (水) 印刷する

NHK日曜討論に見る著しいバランス感覚の欠如 島田洋一(福井県立大学教授)

 2014年10月28、29の両日、北朝鮮の首都ピョンヤンで、日本政府代表団(団長、伊原純一外務省アジア大洋州局長)と北朝鮮の拉致問題等「特別調査委員会」(委員長、徐大河〈ソ・デハ〉国家安全保衛部副部長)による協議が行われた。その2日前に当たる10月26日午前9時から放送されたNHK日曜討論は、日朝協議をテーマに取り上げた。タイミング的には当然の企画と言えよう。しかし、疑問を抱かざるを得ないのはそのメンバー構成である。出演者は、美根慶樹・元日朝国交正常化交渉政府代表、武貞秀士・拓殖大学大学院特任教授、平岩俊司・関西学院大学教授、李鍾元・早稲田大学教授の4人。 
 美根氏は元外務官僚、他の3人は朝鮮半島に関連した論文・著書をもつ研究者で、肩書や経歴に問題はない。
 が、いずれも、北朝鮮に宥和的姿勢を取るか、はたして姿勢や統一的思考があるのか不分明な人ばかりである。当時、日本政府代表団のピョンヤン派遣に対し、「宣伝戦に利用される」「行動対行動原則が益々曖昧になる」といった疑問や批判の声も数多く出されていた。そうした声を代表する人が一人も入っていない。 
 例えばなぜ、朝鮮政治分析および拉致問題の第一人者である西岡力氏など交えないのか。
 4人のうち誰かをはずして西岡氏を入れるなら、3対1ではあっても、最低限のバランスは取り得る。
 北朝鮮の対日情報機関は、NHKのこの種番組やニュースは、日本世論の動向を知る上で特に重視してチェックしているはずである。
 上記メンバーによる、基本的に同一方向の「討論」では、「日本は甘い。何も分かっていない。簡単にだませるな」といった誤った認識を相手に与えるばかりだろう。
  北の政権内部で、「日本国民の多くは拉致問題にこだわっておらず、騒いでいるのは一部右翼勢力のみ」と主張している勢力にとっては、NHKの日曜討論は格好の「証拠」となろう。逆に、思い切った局面打開をトップに進言したい勢力にとっては、やっかいな「日本の専門家たちの一致した声」となろう。
 原則重視の対北ハードライナーばかりを出せと言っているのではない。せめて一人ぐらいは非宥和派を入れよという、きわめて控えめなバランス論を述べているに過ぎない。
 NHKに欠けているのは、国際情報戦の感覚以前の、常識的なバランス感覚である。