公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2015.01.08 (木) 印刷する

谷野作太郎氏は李秀賢君の勇気にならえ 島田洋一(福井県立大学教授)

 『日韓文化交流基金NEWS』第72号(2014年12月27日)に、河野談話の作成に中心的役割を果たした外務省OBの谷野作太郎氏(当時、内閣外政審議室長)がアジア奨学会会長の肩書きで「交流エッセイ」を書いている。まず一部引いておく。

……日韓関係は、いま残念ながら霧の中に迷い込んだ感があります。……今の局面を大きく変え、日韓両国が今のように互打、共傷、共損の世界から抜け出して、共生、共働、共栄の世界を目指すとなれば、やはり日韓それぞれの側の政治のリーダーの方たちの強い勇気とリーダーシップが求められます。次の言葉は、米国のある賢人が述べたものです。

「世論に耳を傾けない指導者は愚かな指導者。世論と共にしか動かない指導者は平凡な指導者。真の指導者とは、志を立てそれに向けて世論を説得し、これを引っ張っていく指導者。」

日韓関係は「霧の中に迷い込んだ感があります」と他人事のように嘆じているが、宮沢喜一内閣時代、慰安婦問題の処理に当たって、「志を立てそれに向けて世論を説得し、これを引っ張っていく」ことをしないよう「政治のリーダー」に具申し、慰安婦強制連行を認めたかのような河野談話を出させたのは誰なのか。

事なかれ的発想から、まず謝罪ありきの外交を主導し、日本国を「霧の中」に迷い込ませたのは誰なのか。

少なくとも、谷野氏が、その最も責任ある一人であることは間違いない。同じエッセイで氏は、2001年1月、JR新大久保駅で線路に落ちた乗客を助けようと、若い命を落とした韓国人留学生・李秀賢君の勇気を称えている。谷野氏も「強い勇気」をもって(と言うほどのことでもないが)、失敗の検証に協力すべきだろう。

天下り先の安全地帯から「政治のリーダーたち」(日本側では誰よりも安倍首相を指すだろう)に訓戒を垂れる暇があるなら、国会の場に出て、国民の問いに堂々と答えるべきだ。あるいは西岡力氏や櫻井よしこ氏との対談に応じるのでもよい。いずれからも逃げ続けるようでは、李秀賢君の名前を口に出す資格はない。