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2015.06.10 (水) 印刷する

中国の浦志強弁護士弾圧と阿古智子氏の重要論考 島田洋一(福井県立大学教授)

 中国の人権問題に詳しい阿古智子東大准教授の2015年5月27日付論考「起訴された中国の人権派弁護士 この政治的迫害を国際社会は注視せよ」(ウェッジ・インフィニティ)は、非常に重要な内容を持っている。国基研の企画委員会は、過去に阿古氏を招き、意見交換を行ったことがある。
 なお、同論考の全文は以下で読める。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5012
 まず、次の書き出しを見ただけで、事態の深刻さは明らかだろう。
 《5月15日、浦志強弁護士が騒動を引き起こした罪、民族の恨みを扇動した罪の二罪で北京市検察院に起訴された。……最も重い場合、懲役10年を超える可能性もあると中国の専門家は指摘している。
 5月19日には、浦弁護士の姪で浦弁護士拘束の後、個人情報の不正取得の容疑で拘束されていた屈振紅弁護士(浦弁護士の助手を務めていました)が保釈された。ご家族も安堵しており、とりあえずはよかったが、彼女は無罪釈放ではなく、保釈されたのだ。1年近くも拘留された上、賠償も請求できない。屈弁護士は体重が10キロも減り、友人から送られて来た保釈後の彼女の写真は、私が見たことのある彼女とは別人のようだった。》
 さて、中国当局の起訴状は、浦弁護士が微博(中国版ツイッター)に書き込んだ内容が「民族関係を挑発しようとし」、「民族の団結を破壊した」、「社会に悪影響を与えた」などとしている。そのツイートとは以下のような内容である。浦弁護士の弁護人が公安当局より入手したものだという
 《天下はすべて王の土地なのか。天下の民はすべて王の家来なのか。新疆が中国のものというのなら、植民地として扱わず、征服者や奪略者にならなくてもよいだろう。先に制した者も、後に制した者も、どちらも制しているのであり、相手を敵とみなすなんて、荒唐無稽な国策だ。ことは一朝一夕に生まれるものではない。また何か起こるかもしれない。死を恐れない民に死をもって脅しても意味がない。襲撃者は真の烈士になりたいと渇望している。先に出るも、後に出るも、一体誰を脅すというのか。新疆の政策は調整しなければならない》(2014年5月7日)
 《チベット自治区の寺は「九有」を徹底しなければならないという。毛沢東、江沢民、胡錦濤など指導者の肖像画をかけ、伊寧(注:地名)ではムスリムがひげをはやしたり、ベールをかぶったりすることが禁じられ、一連の政策によって打撃を与えられている。宗教意識を弱めるなどというが、漢人は頭が狂ってしまったのか。いや、漢人の頭(かしら)が狂っている?!》(2012年1月25日)
 「九有」とは、寺院に「共産党指導者の肖像、国旗、道路、水道、電力、ラジオとテレビ、映画上映設備、書店、新聞」の九つを設けよという2011年12月施行の政府指令だという。
 いずれも、「普通の国」なら何ら問題にならない批評文である。浦弁護士に対する政治弾圧は、中国共産党政権が、自由・民主・法の支配・人権などの価値観に露骨に敵対する存在であることを改めて示した。かつ、弾圧が習近平政権になってより悪辣化したことも示している。
 阿古氏の論考は速やかに英訳され、世界に発信されるべきだと思う。