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2015.06.03 (水) 印刷する

安倍「日本は打撃力なし」答弁が通る異様空間 島田洋一(福井県立大学教授)

 6月1日、衆議院の安保法制特別委員会における安倍首相の発言に一瞬唖然とし、すぐ「ここは日本だったんだ」と思い出し、納得した。
 次のやり取りである。NHKのニュース・サイトから引いておく。

■NHKニュース 2015年6月1日
……共産党の穀田・国会対策委員長は、集団的自衛権の行使について「日本への直接の武力攻撃がないにもかかわらず、他国の領域に出て行って、敵基地を攻撃することまで可能なのか」とただしました。これに対し、安倍総理大臣は「ミサイルが攻撃してくる策源地を攻撃しなければ、国民を守れない、座して死を待つべきではないという論理が控えているが、個別的自衛権においても、その能力を持っていない。ましてや集団的自衛権において、打撃力を持っているアメリカが、打撃力を持っていない日本に、『自国の安全のために攻撃をしてくれ』とは想定しえないわけで、現実問題としてはありえない」と述べました。……(引用終わり)

 敵対勢力が日本への攻撃意思を明らかにし、核ミサイルへの燃料注入を始めたといった「策源地を攻撃しなければ、国民を守れない、座して死を待つ」ことになる状況下では先制攻撃も許されるというのが長年の政府見解である。
 ところが現実には、安倍首相の上記答弁にあるように、日本は「個別的自衛権においても、その能力を持っていない」。すなわち、「座して死を待つ」状態に国民を放置しているわけで、まさに政治の怠慢の最たるものと言える。
 首相の発言は、野党勢力の無責任な攻撃から「集団的自衛」関連法案を守るために出たもので、政治的には理解できるが、普通の国ではありえない答弁である。例えばアメリカの政治家が同種の発言を議場で行えば、直ちに政治生命を絶たれるだろう。その場にいながら咎めなかった議員たちも釈明に追われよう。
 現在審議中の法案が通ったとしても、日本の防衛体制は、まだ国際常識からほど遠いことを如実に示す一場面であった。