公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2015.06.15 (月) 印刷する

韓国の保守派は信頼できるか 荒木和博(拓殖大学海外事情研究所教授)

 李明博前大統領は大阪生まれである。一般的に韓国人に「明博」という名前はなく、明らかに日本名の「あきひろ」として付けられた名前だ。

朴槿恵大統領はいうまでもなく朴正煕元大統領の娘である。朴正煕は日韓国交正常化を実現し、日本の協力のもと韓国の急速な発展を実現した。

どちらも就任当時、日本に縁のある大統領ということ「これで日韓関係も良くなるだろう」と期待されたが、結果は逆だった。2人とも日本と縁のあるが故に韓国内で「親日派」というレッテルを貼られ、それを否定するために反日にやっきになったのである。

洪熒・元駐日公使は韓国の保守系隔週刊誌「未来韓国」に4月、「米国さえいなくなれば韓国に思い知らせてやる」と題した論文を寄稿している。サブタイトルの「日本は70年間韓国に心を開いたことはない。『仮装された友好』だっただけ」というのがこの論文の本旨であり、日韓関係の問題の大部分は日本が作っているという内容のものだ。

洪さんとは昔からのお付き合いで色々とお世話にもなってきただけに、複雑な思いだったが、逆に言えばこれが韓国保守派の大勢と言えないこともない。保守系の中でも日本を歴史問題も含め評価する人が少数ながらいるが、多くの保守派は左翼から「親日派」として攻撃され、その批判を逃れるために反日を叫ぶ。保守系の大手紙「朝鮮日報」などが反日を強調するのもそういうことだろう。

日本時代を単に弾圧と抵抗の視点からしか見ない現在の韓国はどこまで行っても日本との歴史問題での相互理解はできない。洪論文でも「戦犯国」といった言葉すら使われているが、これは軍国主義日本が民主主義の欧米に侵略戦争をしかけ、敗北した後米国によって曲がりなりにも民主主義国家に生まれ変わったというフィクションに根ざした考えだ。

いわゆる保守系の人たちと別に、韓国の大衆レベルで日本に親しみを感じる層が少なくないのも事実であり、彼ら彼女たちへのアプローチを別の形で行っていくことは必要だと思う。しかし「韓国の保守派となら協力関係が結べる」というのは幻想に過ぎないし、現実がそうなっていないことはすでに多くの人が感じている。一定の距離を置いておくことが最善の策だと思う。