私たちはこの間「安倍政権下でも外務省は歴史問題での国際広報に真剣に取り組んでいない。その一番の証拠は、外務省のホームページ(HP)の歴史コーナーで、慰安婦問題で世界に広がる誹謗中傷、性奴隷20万人強制連行説への反論が掲載されていないことだ」と主張してきた。外務省関係者にはもちろん、政権中枢にも様々な機会に繰り返しそのことを伝えてきた。
そして、ついに外務省が重い腰を上げた。HPの「歴史関連」コーナーの「歴史問題Q&A」にある慰安婦問題の項目を、最近、改善したのだ。
これまで、この項目では日本政府の見解として、「多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であると認識しています」「心からお詫びと反省の気持ちを申し上げてきました」「『償い金』の支給等を行うアジア女性基金の事業に対し、最大限の協力を行ってきました」としか書かず、性奴隷20万人強制連行説への反論は一切なかった。
ところが今回の改定で、項目の末尾に資料として「女子差別撤廃条約第7回及び第8回政府報告審査(質疑応答部分の発言概要)(2016年2月16日)」を加えた。ここをクリックすると、杉山晋輔審議官(当時、現事務次官)がスイス・ジュネーブの国連欧州本部で行った性奴隷20万人強制連行説への反論を読むことができる。
HPでは、「慰安婦問題に関する日本の考え方や取組に対し、国際社会から客観的な事実関係に基づく正当な評価を得られるよう引き続き努力していきます」という文章のあとに、典拠資料の存在を示す「*」が加わり、「*」をクリックすると、「杉山反論」に飛ぶようになっている。「杉山反論」が日本の考えを国際社会に知ってもらう努力の一環であることが明示された。
このQ&Aは英語でも掲載されている。外国人が日本政府の慰安婦問題に対する立場を知ろうとするとき、少なくとも「杉山反論」に触れることができる状態になった。これは肯定的に評価できる。
しかし、余りに時間がかかりすぎた。第2次安倍晋三政権ができて3年8カ月、安倍総理が国会で誹謗中傷に反論すると答弁してから7カ月かかった。しかし、私たちが問題提起し続けなければ、この改定は実現しなかっただろう。そう考えると、言い続けることの大切さを改めて感じる。
最後に今後、外務省がなすべきことを書いておく。国連人権理事会で新たな戦時性暴力問題調査官を任命させるように外交努力することだ。クマラスワミ報告から20年経ち、この間、慰安婦問題について研究調査が著しく進んだことを理由に、新たな調査の必要性をアピールして第三国の専門家を調査官として任命させることだ。それさえ実現すれば、その新調査官に日本の基本的立場を具体的な根拠を示して説明することができる。それをふまえた新たな国連報告書が出れば、国際社会でのいわれなき汚名をそそぐことが可能になる。
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