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2016.10.18 (火) 印刷する

ミサイル防衛は専守防衛の呪縛にとらわれずに 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 北朝鮮のムスダン発射失敗と合わせ、産経新聞は17日付朝刊で、弾道ミサイル防衛に追加補正予算計上のニュースとともに、河野克俊統合幕僚長のインタビュー記事を掲載。この中で河野統幕長は米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)など新たな装備の導入に関して、「まだ私から何とも申し上げられないのですけど、今後検討していく必要はあると思います」と述べていた。
 確かに短射程の地上発射型PAC-3は「あいくち」に、イージス艦の弾道ミサイル防衛システム(SM-3)はミッド・コース段階で弾道ミサイルを迎撃する「長槍」に例えることができ、その中間の「太刀」に相当する地上配備型弾道ミサイル防衛システムの必要性はあると思う。
 理由の一つに、イージス艦は常に日本本土の防衛に対応するだけでなく、敵策源地を攻撃しようとする米空母に弾道ミサイル防衛傘を提供するために洋上を機動的に動けるよう運用しなければならないからである。
 しかしTHAAD以外に、もう一つの選択肢も検討に値するのではないか。それはルーマニアやポーランドといった東欧で配備を予定している海上発射型弾道ミサイル防衛システムの陸上配備である。
 これはイージス艦に搭載された弾道ミサイル防衛システムを陸上に配備するものである。THAADが移動式であるのに比し、固定式という欠点はあるものの、将来的には巡航ミサイルをも迎撃できる対空ミサイルSM-6も発射可能だ。さらにはトマホークのような対地攻撃用の長距離巡航ミサイルも発射できる。拡張性を考慮すれば、こちらの方が日本には適しているように思われる。
 弾道ミサイル防衛は単に「守るだけ」では自滅を待つだけである。「専守防衛」の呪縛にとらわれず、敵の発射源や捜索兵器をも攻撃できるものでなければ有効な手立てとはなり得ない。