現憲法は終戦直後に、当時の連合国最高司令官マッカーサー陸軍大将が日本に押し付け、今日でも左翼の人達はそれを後生大事に守ろうとしている。海上保安庁が創設された1948年5月、この創設に強く反対し同組織を軍として組織かつ訓練することを禁じた第25条を挿入することを強硬に主張したのは、米英ソ中の代表からなる連合軍総司令部の諮問機関である対日理事会のソ連代表デレビヤンコ政治中将であった。未だに海上保安庁に、そのソ連製の25条を墨守させようとしていることも憲法9条と類似している。
デレビヤンコ中将が25条を挿入させた理由は、戦前の帝国海軍から受けた苦い体験からであった。当時のソ連は領海12海里を主張、これに対し日本は3海里を主張していた。このためソ連国境警備隊はオホーツク海のソ連沿岸12海里以内で漁業をしようとする日本漁船を取り締まろうとしたが、それに立ちはだかったのが青森県大湊を母港とする帝国海軍の駆逐艦であった。
米国の沿岸警備隊は陸・海・空・海兵隊に続く第5軍として位置付けされており、日本の防衛大臣が米国防総省に訪問する際には沿岸警備隊も栄誉礼に参列する。また中国でも再編前の海警は武装警察辺防部隊の一部分として辺防海警と呼ばれており、中国人民武装警察法によれば、武装警察部隊は人民解放軍現役部隊、予備役部隊及び民兵と共に「国家の武装力量(armed forces)を構成する」中国軍の一部となっている。したがって人民解放軍海軍の多くの中古艦艇が海警船として転用されている。さらには諸外国の軍事力比較を毎年出版しているミリタリー・バランスでも各国の沿岸警備隊を準軍事組織(Paramilitary)と位置付けている。
これに対し日本では、昨今の尖閣周辺での厳しい状況から、防衛大臣が海上保安庁に中古の海自艦艇を提供しようとしたが、海保はこれを断っている。その理由は2つあると思われる。1つは、仮に海自艦艇を海保に移籍した場合、戦闘指揮所(CIC)のコンソール操作等を訓練するためには、海自の学校に海上保安官を派遣しなければならない。これは軍としての訓練禁止を定めた海上保安庁法25条違反となる。
もう1つはただでさえ不足している整備費が大幅に必要となってくるからである。なぜなら海保の船艇は主としてディーゼルエンジンを使用しているのに対して海自の艦艇は主としてガスタービンを使用しており、異なる燃料への対応を含めて、後方支援に莫大な追加費用を投じなければならないからである。ことほど左様に海自と海保とでは情報共有、後方、作戦構想全てについて互換性がない。
何れにしても戦後間もない時期に外国勢力から押し付けられた法体系は見直すべき時期に来ているのではなかろうか。
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