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2017.05.30 (火) 印刷する

日・韓・グアムに同時発射の潜在力誇示か 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 北朝鮮は5月29日、東部の元山ウォンサン付近から日本海に向け、スカッド系と見られる弾道ミサイルを発射した。ミサイルは日本の排他的経済水域内に落下した。14日には西部亀城クソンから「火星12号」を、21日には内陸部の北倉プクチャンから「北極星2号」を発射したのに続き3週連続である。
 これらの軍事的意味合いをどう見るか?今回の弾道ミサイルは韓国全域を射程に収めると同時に、30日に労働新聞が公表した写真から、飛行中の軌道修正が可能な操作翼が弾頭部に付いており、北朝鮮は「精密誘導を行った」としている。このことから、日本海に展開している日米海軍部隊を攻撃することを想定したものともいえる。また21日の「北極星2号」は、日本の全域を射程に収め、さらに14日の「火星12号」はICBM(大陸間弾道弾)に近いのでグアム島を優に射程に収めることができる。これらの弾道ミサイルは全て異なる場所から、しかも移動式発射台から発射されており、これらを同時に発射して日米韓を混乱に陥れる潜在的能力があることを誇示する狙いがあったのではないかと思われる。

 ●米3空母部隊を派遣で北に圧力
 報道によれば、6月1日に米ワシントン州からニミッツ空母打撃部隊が西太平洋に向かうという。5月16日にはロナルド・レーガン空母機動部隊が、事実上の母港とする横須賀を出港している。このため6月後半には3隻の空母打撃群が集中するとみられているが、既に日本海に展開しているカール・ビンソン空母打撃部隊は、日本海に入って1カ月になるので、そろそろ交代するであろう。
 他方で最近トランプ大統領はフィリピンのドゥテルテ大統領と電話会談した際、戦略弾道ミサイルを巡航ミサイルに搭載変更したSSGN(巡航ミサイル原潜)2隻を朝鮮半島近海に展開させていると述べたという。したがって4月25日に釜山に入港したミシガンに加えてもう1隻投入していることが判る。これらのユニットから発射されるトマホーク巡航ミサイルが北朝鮮の最大の脅威であろうことは、5月28日の朝鮮中央テレビが、固体燃料のコールド・ランチ(圧縮ガスを用いて発射管から射出した後,空中でロケットに点火する)方式による対空迎撃ミサイル発射試験に成功した画像を放映したことからも窺える。