韓国の文在寅政権が発足して40日が経った。予想通り、主体思想派の運動家による革命政権という性格が少しずつ明らかになってきた。
政権がスタートした5月10日、文大統領は首相、国家情報院長、秘書室長の3人の核心幹部を指名した。首相には李洛淵・前全羅南道知事、国情院長には徐薫・前国家情報院第3次長、秘書室長には任鍾晳・元国会議員を選んだ。この3人の言動から文政権の性格を分析しよう。
●革命政権だと公言する首相
先ず、李首相だ。彼について日本のマスコミは、東亜日報東京特派員出身の日本通で、合理的思考の持ち主などと評していた。しかし、彼が国会の承認を得て執務を開始した6月1日に行った就任演説の内容は、文政権は革命政権だと宣言するものだった。その主要部分を訳出する。
「文在寅政権は去年の冬から今年の春まで6カ月にかけて延べ1700万人が参加したロウソク革命の産物です。ロウソク革命は『これが国なのか?』という絶望的抗議から始まって、『国らしい国』を作ろうという希望的決意につながりました。 ロウソク革命は政府の無能と不通(朴槿恵大統領に対して使われた独善的だったという意の批判:西岡補)と偏向に対する絶望的怒りから出発して、新しい政府の稼動に対する希望的支持として今展開しています」
「ロウソク革命は文在寅政権の出発で終わったのではありません。ロウソク革命はまだ進行しています。文政権はロウソク革命の終点ではなく通路です。文政権の公職者はロウソク革命の命令を受け取る国政課題の道具です」
●公職者を「革命の道具」と規定
驚いたことに李首相は、「文在寅政権は去年の冬から今年の春まで6カ月にかけて延べ1700万人が参加したロウソク革命の産物です」と述べ、文政権は革命の産物だと宣言をした。「延べ1700万人」とするロウソクデモの参加者数は、主催者発表の大幅な水増し数字だ。その誇張された数字を1国の首相がそのまま演説で使っている。これは合理的な思考の持ち主がやることではない。
その上、李首相は、自らが首相として働く政権を革命の通路だと位置づけ、政権の公職者を「ロウソク革命の命令を受け取る国政課題の道具」と規定した。文政権は韓国のこれまでの体制を否定する革命政権なのだ。
文在寅大統領は歴代大統領が執務した青瓦台を離れ、ロウソクデモの舞台だった光化門広場に執務室を移すと公約している。実はその光化門広場では、左派運動体がテントを張って籠城し、ロウソク革命の請求書を文政権に突きつけている。
朴槿恵前政権時代に非合法化された全国教職員労組(全教組)は機関紙で、「我々は大統領1人を変えようと寒い冬に広場に集まったのではない。全教組の非合法化撤回のための文政権へのFAX闘争に立ち上がってくれ」と書いた。左派運動体の「参与連帯」は、北朝鮮の魚雷による哨戒艦「天安」撃沈事件について北朝鮮を参加させた再調査のほか、大幅な軍縮、すなわち徴兵期間を現行の20カ月から12カ月への短縮、兵力を65万人から30〜40万人へ縮小することを求めている。
●米韓同盟弱体化の危機も
全国民主労働組合総連盟(民主労総)と韓国労働組合総連盟(韓国労総) の2大労働団体は、最低賃金を時給1万ウォンに大幅値上げすることを求めている。これが実現すると、小規模食堂やコンビニなどは人件費高騰で多数が廃業に追い込まれるといわれている。慰安婦問題で日本政府に謝罪や賠償を要求している韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)は、日韓慰安婦合意の破棄と日本の出資で作った「和解と癒し財団」の活動中止などを求めている。
これ以外にも原発廃棄、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配置決定過程の徹底調査と責任者処罰など、ロウソク革命を担った左派団体の要求が殺到している。文政権がこれらを即時に受け入れるなら、米韓同盟の弱体化や韓国経済の悪化など、重大な国益上の危機を迎えるはずだ。李首相自身が自分たちはロウソク革命の道具だと宣言している中、左派の無理難題をどうさばくのか、行方はまだ分からない。