公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2017.07.03 (月) 印刷する

都議選結果で憲法改正の道筋は崩れない 屋山太郎(政治評論家)

 東京都議会における自民党の凋落ぶりは、安倍長期政権を夢想していた国民には寝耳に水の現象であったろう。だが、この結果は憲法改正に至る順調な道筋を大きく崩したわけではない。小池百合子氏自身が極左ではなく、当初から憲法改正論者であるからだ。
 小池氏は今回の都議選で惨敗した自民党よりも憲法改正に正しく向き合った人である。与党の没落は野党を伸長させるものだが、今回は民進党が失った2議席分が共産党に上積みされた程度である。これでは憲法改正に至る流れに大技など仕掛けようがない。
 小池氏が東京都知事に転身して11カ月。この間に上山信一という慶応大学の教授を特別顧問に貼り付けた。その他に377件という都政の政策をとりまとめた。
 地方自治は、いずれも住民が直接選挙で選ぶ首長と議会による二元代表制と言われるが、東京都ほど死に体の行政機構はない。東京都知事はひたすら官僚が仕上げた政策を追認することに終始してきた。豊洲市場への移転問題を担当する市場長経験者が、功績もないのに皆立派なところに天下っているのには驚いた。都議会側のチェック機能ゼロ。都幹部職員の天下りのし放題ぶりが分かる。

 ●都民ファーストで東京は正せる
 橋下徹氏は、大阪府、大阪市で天下りには厳しい制限をかけ、7割の天下り組織を切除した。小池氏は当選当初から60%を超える支持率を得てきた。都政に不信を抱いてきた人は小池陣営に参画した。東京都庁の天下りは大阪府・市のレベルではない。小池氏への支持が都庁人事をすっきりさせることに期待している。
 橋下氏は大阪府・市の不祥事と断固闘った。そのために自身が創設した地方政党を〝全国区〟にまで昇格させる狙いを持っているようだが、特殊な事業間格差や重要性の違いがあって、国家的に地方自治を統括することは困難だ。
 地方分権、道州制は憲法改正のテーマだ。小池氏が当選する前の東京都はドンばかりが集まって、縄張りを決めていた。古参のタヌキを、まずすっ飛ばすことによって東京が生き生きしてきた。
 「加計学園問題」は事件ではない。それを事件がらみにしたのは安倍氏側近の怠慢としかいいようがない。安倍氏は小池氏の思惑を内心期待していたのではないか。大阪が「維新」で保っているように、東京も、「都民ファースト」で正せる。中央政府は地方に役人を出張させて中央集権を維持すべき時ではない。