公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2017.07.26 (水) 印刷する

共和党の73%が対北軍事行動支持の現実 島田洋一(福井県立大学教授)

 7月19日に発表された米FOXニュースの世論調査に、北朝鮮に関して興味深い設問と結果があった。調査は7月16日〜18日に実施された。
 設問は、「あなたは、北朝鮮が核兵器開発を続けるのを止めるために、アメリカが軍事行動を取ることに賛成ですか反対ですか」(原文=Do you favor or oppose the United States taking military action to stop North Korea from continuing to develop its nuclear weapons program?)である。
 これに対し、全体の51%が賛成、37%が反対と答えている。ただし、共和党員に限ると73%が賛成となっている。ちなみに民主党員では賛成35%で、約半分の比率だった。

 ●政治的敷居は低くなっている
 現在、大統領府に加え、米議会も上下両院で共和党が多数を占めている状況に鑑みれば、全体の51%より、共和党員の73%が賛成という数字の方に、より大きな意味があるのではないか。アメリカにおける、対北軍事力行使に向けた政治的敷居は、かなり低くなってきていると言える。
 ちなみに、この調査は、民主党系のアンダーソン・ロビンズ・リサーチと共和党系のショー&カンパニー・リサーチの2社に共同作業を依頼し、無作為抽出で全米1020サンプル(固定電話432台と携帯電話588台)から結果を得て集計したという。固定電話に限ると、自宅にいる時間の長い高齢者にサンプルが偏りがちになるため、携帯電話の比重を増やしたものである。

 ●日本では調査すらできない
 さて、日本で同じ調査をすればどういう結果になるかと考え始めて、そもそも調査自体が成り立たないことに気づいた。
 「アメリカが軍事行動を取ることに賛成ですか反対ですか」では、あまりに主体性のない第三者的な問いになるし、「日本が軍事行動を取ることに賛成ですか反対ですか」は、現行憲法下においては空虚な問いとならざるを得ない。
 話にならない、というより調査対象にすらならない。そんな状態に日本は未だある。