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2017.09.25 (月) 印刷する

米シンクタンクに影響与える中国マネー 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 中国国営通信、新華社の英文ウェブサイトは8月29日付で「米国の主要シンクタンク、ランド研究所が中国政策研究のため300万ドルを受領」とする記事を掲載した。
 昨年1月には、同研究所の分析官が「尖閣をめぐる日中戦となれば日本は5日で敗北する」との衝撃的なシミュレーション結果を発表して話題を呼んだ。ほぼ同じ頃、ハドソン研究所の研究員2人も、よく似た内容のレポートを公表している。
 この直後、「言論テレビ」で櫻井よしこ理事長から、このシミュレーション結果に対する見方を問われた筆者は、「これは中国による三戦(世論・心理・法律)で、日本に対しては戦っても無駄だという敗北感を醸成する心理戦を、米国には日本を支援しても無駄だとする世論戦を展開している」と述べた。
 中国から資金提供を受ければ、中国にとって有利な内容の出版物を出すのは当然だ。中国による米シンクタンクへの資金提供事情に詳しい人物は筆者に、「ハドソン研究所の某研究員も、本人は否定しているものの中国から献金を受けている」と語った。ワシントンの米主要シンクタンクは、「プロジェクト2049研究所」以外、多かれ少なかれ中国からの献金を受けているという。

 ●中国大使館員が講演を妨害
 9月中旬の1週間、米国ワシントンに会議出席のために出張した。現地では当初、「中国のハイブリッド戦」をテーマに講演する予定だった。ところが、講演で使用するパワーポイントを送ったところ「予期しない争い(Unforeseen conflict)が起こる」という理由で講演は突然、キャンセルされた。
 ワシントンでは、講演を公開して聴講者を募ると、必ず中国大使館から館員が反論に来る。一昨年、ワシントンのCSIS(戦略国際問題研究所)での講演で経験済みだったから、今回の講演キャンセルも「これが原因だな」と思った。米国の政策策定に影響を与えるための講演や円卓会議は、非公開で行わなければならなくなっている。

 ●プロパガンダとしての孔子学院
 中国は全世界の大学にプロパガンダ機関としての「孔子学院」を配置している。2014年6月に米大学協会の教授達が孔子学院との協力を止めるよう大学に勧告し、同年9月にシカゴ大学が、10月にはペンシルバニア州立大学が、閉鎖に応じたものの、未だに大多数の大学は孔子学院を設置したままである。
 日本はもっとひどい。日本の大学では孔子学院が多くの大学に設置されているにも拘らず、米国のように閉鎖を求めるような動きは全くない。
 1999年に2人の中国空軍大佐が書いた『超限戦』では、戦いとは単に武力だけでなく経済も情報もあらゆる手段を駆使して敵に勝つことだと述べている。それが今日の中国の戦い方であると認識しなければならない。