11月7日の米韓首脳晩餐会に文在寅大統領が元慰安婦を招いてトランプ大統領に紹介、夕食メニューに「独島エビ」を出し、日本領竹島を自国領とアピールする演出も加えた。日本政府は、日韓慰安婦合意の精神に反し、また日米韓が対北朝鮮で一致結束すべきときに、ことさら隊列を乱す行為として抗議したが、当然である。
こうした話を聞くたびに思い出す情景がある。
2002年のサッカー・ワールドカップ日韓大会。対米国戦で同点ゴールを決めた韓国の安貞桓が、突然アイススケートのパフォーマンスをした。他の選手も後に続き、大いに観客の喝采を浴びた。同年のソルトレークシティー冬期五輪のショートトラックで、日系二世の米国選手オーノが、1着でゴールした韓国・金東聖の進路妨害を「オーバーアクションで」アピールし、「不当に」金メダルをもぎ取った、その恨みを晴らしたというわけである。
W杯の米韓戦の場合も、相手の米国チームの選手を含め、世界のほとんどの人間が何のことか分からなかったろう。それを恥ずかしいとも思わないのが韓国である。なお翌2003年、韓国・全州でショートトラックのW杯が開かれたが、オーノへの脅迫やサイバー攻撃が相次いだため、米国チーム全体が不参加を決めた。何ともしつこい「恨」である。
●「象徴慰安婦制」と化した韓国
戦後日本を象徴天皇制と言い表す人がいるが、今や韓国は「象徴慰安婦制」と化したと言える。日本への根深い恨み(しかも偽史)を体現する元慰安婦が、「国民統合の象徴であって、この地位は韓国国民の総意に基づく」わけである。
そう考えていたところ、韓国人の女性記者による優れたコラムに出会った。朝鮮日報(日本語電子版)に11月7日付で載った金真明記者の「高笑いの康外相、よりによってこの時期に」と題する一文である。以下に抜粋して引いてみよう。
《5日夜、SBSの時事番組『キム・オジュンのブラック・ハウス』に出演した外交部(省に相当)の康京和長官は実によく笑った。……「(ドナルド・トランプ米大統領に会ってみて)ちょっと変だと思う部分はなかったですか?」という質問に、康京和長官は「だからと言って、私がこの場でお話しできると思いますか?」と答えた。司会者が「あったんですね?」と問いただした時も、「あったと…」と言った時も、康京和長官は「ハハハ」と笑った。トランプ大統領が独特のスタイルを持っていることは誰でも分かる。しかし、康京和長官は、7日に訪韓するトランプ大統領を出迎えなければならない外交部の長官だ。このような会話が韓国の外交で何の役に立つのか、理解に苦しむ。……康京和長官はまた、「『女性だから安保意識がない、対北朝鮮観がない』とよく言われます」とも話した。だが、それは「女性だから」だろうか。「戦争はいけない」と言いながら、「生存背嚢(非常持ち出し袋)」が何なのかを知らず、「戦術核再配備は検討したことがない」と言いながら、「戦術核」が何なのかを知らなければ、同長官の安保意識が問題視されても仕方がない。この番組は、週末の二日間にわたり放送された。康京和長官が出演する前日夜の放送で、司会者は「トランプ大統領は『構ってちゃん』だと思う」と言った。康京和長官の発言内容はさておき、外交部長官がなぜこのような時期に、よりによってこんな番組に出演したのか疑問だ。》
●ファクト発信の努力緩めるな
こうした良識が、慰安婦問題となると、付和雷同か沈黙に至ってしまう。「象徴慰安婦制」と評したゆえんだが、公に異論を唱えると刑事罰が科せられる点で、きわめて抑圧的な国柄である。
イバンカ・トランプ氏が、訪日だけで韓国訪問はキャンセルしたのは幸いだった。女性で大統領に一定の影響力を持つイバンカ氏訪韓となれば、韓国政府は間違いなく元慰安婦たちが日本への「恨」を訴える場を設定しようとしたであろう。
韓国が日韓合意を守るつもりがなく、あらゆる機会を捉えて世界にフィクションを発信し続けるであろうことは、今回の一件でも再証明された。ファクトを発信する日本側の努力を緩めてはならない。