北朝鮮をめぐる緊張が続く中、12日から日本海で3個米空母機動部隊と海空自衛隊による4日間の共同演習が始まった。戦争になれば双方ばかりか、日韓両国も甚大な被害を被ることになるから、その可能性は低いと推測する人達が多い。しかし、戦争は「誤算」「錯誤」そして「勢い」によって生起することがままある。約百年前、サラエボの銃弾一発によってその後4年にわたる戦争と数千万人の犠牲者を一体誰が予測したであろうか。
本年6月に北朝鮮は元山から日本海の我が国排他的経済水域(EEZ)に精密誘導の対艦弾道ミサイルKN-17を打ち込んだ。この時、米空母機動部隊は反応しなかったが、仮に今後、北が再発射し、米海軍が自衛権を発動して迎撃、さらには発射源であるミサイル基地を攻撃して戦争にエスカレートする可能性はないとは言えない。
●米国防長官が自信示す根拠
本年4月に米太平洋軍司令官は、空母カール・ビンソンを寄港先のオーストラリアから予定を変更して朝鮮半島沖に向かわせると発表したが、その後なかなか姿を見せなかったことから、メディアは「空母はどこに行ったのか」と報じていた。しかし、筆者はわざと時間をかけて展開させたと見ている。
北は米空母の展開に備え、核・ミサイル関連物質を地下に隠すための通話交信を頻繁に行った。その状況を米電波傍受部隊が把握し、攻撃目標の掌握は既に終えているようだ。それが9月18日のマティス国防長官の「韓国を危険に陥れることなく北を攻撃できる」発言に至ったものと見ている。
恐らく米国は、最初にB-1やB-2そしてB-52と言った爆撃機が地下貫徹爆弾や精密誘導爆弾(JDAM)によって核・ミサイル施設を9割以上破壊するであろう。次いで1隻当たり154発のトマホーク対地巡航ミサイルを搭載した原子力潜水艦(SSGN)3〜4隻や水上艦艇が500〜600発を指揮・通信施設等に撃ち込み、最後に空母艦載機による掃討作戦が行われるはずだ。
北朝鮮軍は核や弾道ミサイルの開発に特化しているため、米軍のこうした攻勢を迎撃できる防空能力は極めて乏しい。また空母群を攻撃できる潜水艦も無きに等しい。
●金正恩の脱出先はロシアか
米統合参謀本部は4日、北の核施設の位置を特定して確実に破壊するためには地上部隊の派遣が必要との書簡を野党下院議員に送った。しかし、地上部隊の派遣は、相当な兵員の被害を想定せざるを得ない。従って米国としては「北朝鮮まで我が国の領土」と主張している韓国軍に地上戦は担ってもらいたいと考えている。
しかし左翼政権である文在寅政権は躊躇するであろう。その場合、10月上旬から中朝国境に18万もの人民解放軍を集結させている中国が難民対策を口実として南下してくる可能性が高い。なぜなら中国にとっての国益は、北の核コントロールと米同盟国との緩衝地帯を確保することであるからだ。
ロシア軍も国際的な発言権を確保するため、難民対策を口実に国境付近から介入してくる可能性がある。北朝鮮は第2次世界大戦後のドイツのように主要国に分割統治されるのではないか。
既にロシアは使用権を獲得している羅津港からウラジオストクまで金正恩の秘密脱走経路を作ったとする情報がある。最終的には北極海にあるスヴァーバル諸島にロシアが建設した超豪邸に逃がすつもりではないか。1920年に締結され、同諸島で加盟国が等しく経済活動を行うことを定めたスヴァーバル条約に、昨年突如として北朝鮮が加盟したことに何らかの関連があるかもしれない。
日本の多くの人達は「平和ボケ」から戦争はないと予測している。湾岸戦争の開始前夜も、日本ではテレビの深夜討論番組で、出演者全員が「戦争はない」としていた。だが戦争は、その翌日に始まった。アフガン戦争やイラク戦争も日本人の多くは「ない」と予測していた。逆に米国にとってみれば、過去30年間にこの種の戦争は3回も行っているのである。