公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

国基研ろんだん

2017.12.11 (月) 印刷する

巡航ミサイル導入で先ず論ずべきこと 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 小野寺五典防衛相が8日の記者会見で、長距離巡航ミサイル導入の関連予算を平成30年度予算案に計上する方針を正式に表明した。筆者は本欄や『今週の直言』で何度も導入の必要性を訴えてきたので、「ようやく」という感想である。ただ、現在の議論に欠落していると思われる点があるのでそれを指摘したい。

 ●目標捜索、インテリジェンスは?
 通常、こうした作戦の流れは、先ず捜索して目標を特定、攻撃し、その後に攻撃が成功したのかを検証する「戦闘被害評価(Battle Damage Assessment)」を行って成果不十分な場合には再度攻撃するという流れになっている。
 メディアでは「敵基地攻撃に使われるのではないか」といった議論ばかりがなされているが、問題は如何にして目標を捜索し、攻撃成果を評価するのかであるのに、この点については余り論じられていない。
 北朝鮮の弾道ミサイル発射でもわかるように、発射母体はいまや夜間でも移動できる輸送起立発射機(TEL)なのである。それをどうやって見つけ出すのか、ということこそが問題で、「敵基地」などという固定化した概念はもはや古い。それをいうのなら、「敵目標」とすべきである。
 目標捜索のためヒューミント(人的情報源)を北朝鮮に入れることができると考えている人は余程御目出度い人だ。無人偵察機を使えば可能だろうが、自衛隊では未だ実戦配備されていない。

 ●探知衛星でも方針固まらず
 偵察衛星か?しかし日本の情報収集衛星は光学とレーダー各2基で運用されており、1日に1回、特定の場所を見る事ができるだけである。しかも、曇りや雨天の場合には発見できない。レーダー衛星は夜間も使えると考えている人がいるかもしれないが、光学衛星によって事前に昼間確認された物体の動きが判る程度である。
 おそらく弾道ミサイル発射の第1発見センサーは、発射の熱源を探知する赤外線センサーを搭載した衛星となろうが、我が国は現在保有していない。将来の方向性についても、そうした衛星を独自に開発するのか、それとも米国の探知システムに頼り続けるのか、明確になっていない。
 さらには地下に作られた発射基地の場合には、過去積み重ねられたインテリジェンスが必要となってくる。この辺の議論に関しても、ほとんどなされていないのは問題ではないだろうか。