2017年12月27日、韓国外相直属の「タスクフォース」が、慰安婦問題に関する日韓合意(2015年12月)の「検証結果」を発表した。その内容の問題点は、同28日付の「今週の直言」で西岡力氏が指摘したとおりである。
ここでは、日韓合意とアメリカとの関係について一言付け加えたい。
●米国は「立会人」役果たせず
28日付の産経新聞で、阿比留瑠比論説委員が次の様に書いている。
「合意に当たり米国を『立会人』として引き込み、テレビカメラの前で日韓両国の外相が合意を発表するという手順を踏んで、国際社会を証人にした。つまり……韓国が合意を守らず、再びゴールポストを動かそうとする事態を予め見越して『かんぬきをかけた』のである」
これは正しい認識だが、日本外交として、なお十分な注意が必要である。
確かに日本側は、合意当時の米政府(オバマ政権)に状況を伝え、「立会人」として引き込んでいる。また、リチャード・アーミテージ元国務副長官、マイケル・グリーン元米国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長ら政権外の代表的な知日派にも、在米日本大使館を通じて詳細を説明し、理解を得たと聞く。
しかし、当時の米政府関係者は、すでに全員が政権を離れており、トランプ陣営の幹部にどの程度引き継ぎが行われたか不明である。アーミテージ氏らも、2016年の大統領選挙中に、トランプ氏には大統領の資格なしとする公開文書に署名したため、政権に起用されず現在に至っている。
●「かんぬきかけた」は楽観的
また、エド・ロイス下院外交委員長を中心とする米議会のコリア・ロビーは、歴史問題に関して、常に完全に韓国側に立ち、日本の主張には聞く耳を持たなかった。それは選挙区にコリア系住民が多いなどの事情に根ざしており、今後も変わることはないだろう。「かんぬきをかけた」は、あくまで希望的観測と心得た上で、米国要路に対する「確認作業」を改めて強化せねばならない。
1993年8月の「河野談話」に代表される、「まず謝罪ありき」の外交がもたらしたツケは余りにも大きい。日本政府が、すでに問題は「最終的かつ不可逆的な解決」に至ったと明確に主張するのは正しいが、その認識に安住するのは危険である。