12月27日、韓国外相直属の「慰安婦合意検証タスクフォース」が、慰安婦問題に関する日韓合意(平成27年12月28日)の検証結果を記載した報告書を発表した。韓国語の全文を通読したが、一言で言うと、国内の政争を外交に持ち込んだ、日本としてははた迷惑な内容だった。
●政争の具に外交を使う
報告書は合意に対して4つの否定的評価を下した。すなわち、①被害者の意見を十分に集約しなかった②朴槿恵前大統領の「慰安婦問題の進展なくして日韓首脳会談の開催なし」という姿勢が日韓関係を悪化させた③秘密交渉が行われ、合意の非公開部分には韓国側に負担となる内容が含まれていた④大統領と交渉当事者、外務省の間に「疎通」(コミュニケ—ション)不足があった―と結論づけた。
これらはすべて、韓国内部の問題であり、外交交渉そのものの瑕疵ではない。河野太郎外
相が「合意は両政府間において正当な交渉過程を経てなされたものであり、合意に至る過程に問題があったとは考えられない」と的確に反論した通りだ。
特に②から④は、前政権の国政運営に対する文在寅政権側の批判だ。このうち④は、朴槿恵前大統領が真の側近を持たずほとんど全ての事案を書類でやりとりしていたという、韓国マスコミが繰り返し報じてきた批判であり、韓国語でそれを「疎通がない」と表現していた。同じ表現を外相直属機関が公文書に使用している。日本からすると、②から④は外交を政争の具に使っているのであり、無視すべきだ。
①の被害者の意見集約が不十分だったという批判も的外れだ。報告書に明記されているように、合意当時生存していた元慰安婦47人のうち36人が1億ウォン(約1000万円)を、死亡していた199人のうち68人の遺族が2000万ウォン(約200万円)を、日本政府が出資した財団から受け取ったか、受け取る意思を表明している(12月27日現在)。生存者の約8割が日本からの金を受け取った事実こそ、大多数の元慰安婦が合意を受け入れている証拠だ。
●代表的支援団体は親北
報告書は、元慰安婦だけでなく「支援団体」からも意見を聞くべきだと繰り返し書いている。代表的な支援団体は韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)だ。1990年代初めに挺対協と共に元慰安婦の聞き取り調査を行い、数年後に挺対協を批判して手を引いた安秉直ソウル大学名誉教授は、挺対協が元慰安婦の人権擁護ではなく日韓関係悪化を活動目的としていると断言している。挺対協の幹部には北朝鮮に近い極左活動家が多数入り込んでいるので、いくら日本政府が女性の人権という観点から慰安婦問題に誠意を見せても無駄なのだ。
日本としてはこれからも繰り返し合意の履行を求め続け、文政権が合意を破棄したり、慰安婦問題に関する新たな外交協議を求めたりしてきても、相手にするべきではない。(了)