2018年を迎えて、新年の国際情勢予想が欧米メディアをにぎわせている。焦点の一つは中国の影響力拡大であり、トランプ政権の米国第一主義によって生ずる世界秩序の空白を中国が埋めることを警戒する声が上がる一方で、中国の拡張主義への抵抗が世界各地で強まるという予測もあり、国際社会の先行きを不透明にしている。
●地政学上の危機
中国への警戒心を強く打ち出したのは、国際的なコンサルティング会社ユーラシア・グループだ。国際政治における2018年の「10大リスク」のトップに、中国が西側の自由民主主義に代わる政治モデルを世界に提供し、影響力を増す可能性を挙げた。
1月2日に発表された同グループの報告書は、米国第一主義が米国主導の世界秩序をむしばんできたと分析するとともに、2018年には世界における米国の影響力低下が加速し、2008年の世界金融危機に匹敵する地政学上の危機が訪れそうだという不吉な予想を立てた。特にアジアでは、米国の役割についての疑念が力の空白を生み出し、その空白を中国が埋めようとする、と述べている。
中国への警戒は、米紙ワシントン・ポストのコラムニスト、ファリード・ザカリア氏も共有している。昨年12月28日のコラムで、「(力の空白を埋めようとしている国は多々ある中で)中国だけが現代史の次の章を構成するのに必要な資金と戦略力を持っている」と書き、中国が歴史に新たなページを刻む可能性に言及した。
●「一帯一路」に抵抗も
しかし、海外で影響力を拡大する中国の動きが、西側や開発途上国で反発を買い始めたことにも注目すべきだろう。オーストラリアでは、華人実業家から献金を受けた野党議員が南シナ海の領有権争いで中国を擁護する発言をして、辞任に追い込まれた。ドイツ情報機関は、中国がインターネットの交流サイトを通じて政治家や官僚の個人情報を収集していると警告した。米国では、議会と行政府の合同委員会が米国内での中国の活動を調査する公聴会を開いた。
中国の広域経済圏構想「一帯一路」も域内国家の抵抗に直面している。この構想で重要な位置を占めるパキスタンは、中国の融資条件の厳しさを理由に水力発電用のダム建設を棚上げした。スリランカでは、中国の援助で建設したハンバントタ港の融資返済が重荷となり、政府が99年間の港の租借権を中国に与えたことに非難が渦巻いた。
デンマーク国際問題研究所のルーク・パティ上級研究員は、こうした抵抗に照らして、2018年には中国に立ち向かう試みがもっと出てくると予想し、中国が西側への干渉を控えなければ「手の広げ過ぎで、結局は中国のグルーバルな力は減ずるだろう」と書いている(12月27日、米紙ニューヨーク・タイムズ寄稿)。
2018年に中国リスクは増えるのか減るのか。その影響をもろに受ける日本は、内向き志向のトランプ政権にインド太平洋地域への関与を続けさせるための外交努力を、同じ民主主義国である豪州やインドとも連帯しながら、一層強める必要がある。(了)