米サンフランシスコの慰安婦像は、これまでのチマチョゴリを来た朝鮮人少女像でなく、朝鮮人、中国人、フィリピン人の慰安婦像が3体並び、それを韓国人老婆(最初に名乗り出た元慰安婦がモデル)が横で見つめるという特異なものだった。それを設置したのは韓国系でなく中国系の反日団体だった。また、マニラでフィリピン人の慰安婦像を設置したのもフィリピン人でなく中国系団体だった。中国が慰安婦問題で前面に出てきた表れだ。
私はサンフランシスコで慰安婦像を設置した2人の中国系米国人女性について調べてみたところ、次のような驚くべきことが分かったので報告する。なお、引用した2人の発言は、韓国の左派系新聞ハンギョレ新聞(2017年11月17日付)の記事より筆者が翻訳し引用した。
●リーダーは中国系米国人判事
慰安婦像設置とサンフランシスコ市への寄贈活動を主導したのは、「慰安婦の正義連帯」(Comfort Women Justice Coalition=CWJC)という団体だが、その共同議長のリリアン・シン(Lillian Sing )とジュリー・タン(Julie Tang)は2人とも中国系米国人女性だ。
シンは30年間、タンは26年間、それぞれ判事を務めた後、タンは2014年に、シンは2015年に、いずれも「慰安婦の正義連帯」の活動のため休職したという。
連邦判事は終身職だが、州判事は6年ごとに再任用契約を結ぶため、彼女らは再任用されない可能性もある。判事の給料を投げ打って反日運動に専念しているのだが、彼女らは現地の中国人コミュニティーと関係がよくないと言われており、彼女らを支える財政基盤はどこにあるのか不明だ。
彼女らは戦中に家族が日本軍の被害を受けたと主張し、ハンギョレ紙に対し、次のように述べている。
「戦争の時、家族が広東省のある村に避難しました。近くに日本731部隊があったといいます。その部隊がまき散らした細菌に感染して二人の姉さんが死にました」(タン)
「日本軍が通り過ぎるとき、上海の人々は腰を曲げて挨拶をしなければならなかった、と母が話していました。中国の人々は日本の奴隷だという発想でした」(シン)
●「南京虐殺」追及にも関与
彼女らは1997年、「南京大虐殺賠償連合会」(Rape of Nanjing Redress Coalition、以下連合会)という団体を作り、アイリス・チャンと組んで、「南京大虐殺」への日本の責任を追及するキャンペーンを米国内で展開した。「虐殺20万〜30万人、強姦2万〜8万人、女学校生徒をレイプ」など荒唐無稽な主張をしている。
「西洋宣教師が建てた南京の金陵女学校が市民たち1万名を保護していました。日本軍が夜ごとに女を送りだせと言ってきて、1日20人ずつ送りだしたといいます。後には幼い女子学生まで出されて行きました。彼女らは一人も帰ってこなかったのです」とタンは述べている。
CWJCの結成は2015年8月。タンは慰安婦問題に取り組み始めた動機は「慰安婦被害者のおばあさんが次々に亡くなるのを見て」とし、結成の経緯を次のように語る。
「南京の記録は2015年、ユネスコに登録が決定されました。当時、ニューヨークで登録のための会議が開かれましたが、『連合会』は40万人以上の支持署名を提出しました。ところが同時に申請した慰安婦の記録は日本政府の熱心なロビー活動のため、登録が拒否されました。南京がより重要ではないということでなく、慰安婦問題がもっと大きい戦いだと判断しました。日本が積極的に歴史を否定する姿を見たからです」
●大阪の姉妹都市解消も非難
一方、シンは2015年9月、カリフォルニア州議会が開催した慰安婦決議のための公聴会で証言を行った。彼女はその前日に判事を休職している。彼女の慰安婦認識は次のようなものだ。
「(慰安婦問題は)世界的イッシューです。世界女性の人権の問題でしょう。初めは朝鮮から連行された女性が最も多いと考えていました。ところが、中国学者の研究を見ると、中国で慰安婦が20万人も連れて行かれました。韓国では16万人が連れて行かれた。私が生まれた上海の女性たちが最も大きい被害を受けました。上海にも慰安所がたくさんありました」
彼女らはまた、慰安婦像に次のような碑文もつけている。
「この記念碑は、婉曲的表現で『慰安婦』と呼ばれるが、実際には1931年から1945年までアジア太平洋の13カ国において日本帝国陸軍の性奴隷であった数十万の女性や少女の苦しみを証言するものです。性奴隷にされた女性や少女たちのほとんどが捕らわれの身のまま亡くなりました」
慰安婦像の設置を受け入れたサンフランシスコ市に対し、大阪市は昨年11月、60年続いた姉妹都市関係を解消したが、彼女らは、これについても激しく非難している。2人は、自分達のところには慰安婦像設置に賛成し、吉村洋文市長の決定を批判する多数の大阪市民や市議会議員の声が届いていると主張する。
●「慰安婦40万人説」許すな
彼女らはまた、昨年11月17日にソウルで開かれた「慰安婦」記録物のユネスコ登録に向けた国際会議に参加するため訪韓している。会議は慰安婦文書登録を申請した8カ国のNGOらと韓国政府が共催し、全世界の反日活動家が集まり、昨年10月に再度見送られた慰安婦文書登録のための方策を議論した。日本からは日韓合意の白紙化を主張する吉見義明中央大学名誉教授らが参加している。
今後も2人は、「慰安婦40万人説」を広めるため、ユネスコに慰安婦記録の登録を求めていくなど、積極的に活動すると宣言している。
「慰安婦問題は学者の努力で、これ以上証拠が必要でない程に事実関係が証明されました。いまや、デモや他の活動によって政治的圧力をかけることが一層重要です。 歴史戦争を戦っている日本が(登録に関連する)協議を受け入れるでしょうか。2年後にはユネスコが必ず登録申請を通すように、ユネスコが直面した今回の状況を暴露することが重要です」(シン)
今後も中国主導で全世界に慰安婦像が立てられ、ユネスコなど国際機関でしつこく慰安婦問題を使った反日活動がなされることが予想される。それにどう対抗するのか。官民が協力して反論する体制を作ることが急務である。