平昌オリンピックを巡る北朝鮮の韓国取り込み戦術に対して、河野太郎外務大臣は「北朝鮮の微笑外交に目を奪われるな」と発言している。しかし、それは日本の対中国外交でも心がけるべきことだ。
そんなことを考えたのは、日本の安全保障を司る政府高官から最近、「中国の王毅外相が、ニコニコ笑って対応して来たよ」という話を聞いたからだ。
モンゴル出身で、一昨年、国基研日本研究賞を受賞した静岡大学教授の楊海英氏によれば、「中国人は最初ニコニコしながら近づき、自分たちの目的が達成できる見通しが出来るや否や豹変して強圧的になる」という。
●チベットでも手のひら返し
衆議院議員会館で20日行った講演で、チベット亡命政権のロブサン・センゲ主席大臣は、「1950年代に中国は、平和と繁栄のためだと称して礼儀正しく、この地域に道路を作るのだとニコニコしながら接近してきたが、道路ができるや否やトラックに銃や大砲を搭載して独立国であったチベットを蹂躙し始めた」と語った。
昨年の夏、中国はインドとの係争地であるドグラム地区にやはり道路を作るのだと言って軍を進駐させた。今回も、「一帯一路」即ち交通路の整備を口実に、ウイン・ウイン(双方のためになる)だと微笑しながら日本に接近して来ているが、軍事的拡張という鎧が衣の下に見え隠れしていることは上記の例からも明らかだ。
●天皇訪中も制裁破りに利用
1988年から中国の外交部長であった銭其琛は回顧録で、1989年の天安門事件以降、西側の経済制裁において「日本は最も結束が弱く、天皇訪中は西側の対中制裁の突破口という側面もあった」と書いている。要するに当時、中国は微笑外交で天皇訪中を利用したに過ぎなかったのだ。
今回の北朝鮮の微笑外交も、日米韓同盟の最も結束が弱い韓国を取り込もうとして接近して来た。いつも最も弱いところが狙われている。