公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2018.03.02 (金) 印刷する

ペンス氏の〝ほほえみ外交〟潰し 島田洋一(福井県立大学教授)

 平昌五輪の開会式に出席のため韓国を訪問していたペンス米副大統領と、金正恩の妹与正を中心とする北朝鮮代表団との会談が設定されながら、直前に北朝鮮側がキャンセルを申し出て中止に至っていたと2月21日、日本のメディアが一斉に報じた。20日付の米紙ワシントン・ポスト(電子版)の記事に基づくものであった。
 これを受け、アメリカが「柔軟路線」に転じたのではないかと、懸念ないし期待を表明する声も上がった。

 ●北の会談忌避は米外交の勝利
 評価に入る前に、ポスト紙の記事を子細に見ておく必要があるだろう。
 まず主要情報をオンレコでポスト紙に提供したのはニック・エイアーズ副大統領首席補佐官である。会談を熱心に仲介した韓国政府でも、北朝鮮でもない。米政府による情報発信の一環という点が重要である。
 エイアーズ氏は、ペンス副大統領の訪日、訪韓の目的は、「当初からの言明通り、オリンピックの場で好感を与えるシャッター・チャンスを演出し、殺人的体制の実態を糊塗しようとする金正恩の願望を打ち砕くこと」にあったと述べている。
ペンス氏は自らを「北朝鮮のプロパガンダに立ち向かう戦士」と位置づけており、その姿勢は終始一貫していた。従って、北がペンス氏の制裁強化声明や脱北者との面会などを理由に会談を忌避してきたのは、訪韓ミッションが成功した証に他ならない。

 ●日本の政治家がなすべきこと
 ソウルでの米朝会談を受けるか否かについては、副大統領の訪韓前にホワイトハウスで協議が行われた。トランプ大統領、ペンス氏、マクマスター安保担当補佐官、ケリー大統領首席補佐官、エイアーズ氏が出席し、ポンペオCIA長官が電話で参加、マティス国防長官、ティラーソン国務長官も部分的に話し合いに加わった。
 この場で正副大統領は、米朝高位級接触の目的は、北との交渉開始ではなく、トランプ政権の厳しいスタンスを直接伝えることとする点で合意を見た。「われわれが公に政策とし、公に語っていることが、掛け値なき本音であることを北は理解する必要がある、というのが大統領の考えだった」とエイアーズ氏は言う。
 トランプ政権は頑なに北との対話を拒否しているとの批判に応えると同時に、ペンス氏は北の五輪プロパガンダを積極的に打ち砕いたと広報するのが、エイアーズ補佐官による情報提供の目的だったと言える。
 日本の政治家がなすべきは、米政権の意図を憶測して懸念を云々することではない。ペンス氏同様に北の人権蹂躙を明確かつ厳しく非難し、その点で日米有志政治家間の連帯を強め、アメリカが「抜けられない」ようにすることだろう。