3月19日から1週間、米国の海軍大学院(カリフォルニア州)、ミシガン大学、マイアミ大学、空軍大学(アラバマ州)で、「北東アジアの安全保障情勢:日本と同盟国への影響」と題して講演した。北朝鮮の挑発、中国の軍事的膨張、ロシア軍の極東における活動の活発化に対する対抗策として日米豪印の4カ国協力構想を説明したのであるが、全ての講演場所で出た質問は「(協力構想には)何故韓国が入らないのか?」であった。特に海軍大学院とミシガン大学では最初の質問がこれであった。
●対中関係が最優先の韓国
質問に対して筆者は、韓国は、「高高度防衛ミサイル」(THAAD=Terminal High Altitude Area Defense missile)の配備で中国の猛反発を受け、韓国製品のボイコットなどにより、南シナ海の国際仲裁裁判所判決にも西側諸国として唯一沈黙を保ってきた。韓国は常に中国の顔色を窺っており、対中包囲網と受け取れかねない枠組みには参加しないであろうと筆者は答えた。
マイアミ大学の韓国人留学生には、「韓国は日本海を東海と主張するが、渤海を西海だとは中国に主張しないでしょう」と例示したところ、理解してくれた。
空軍大学では、聴衆の殆どが日本と韓国に勤務したことがある空軍士官であったので、同じ同盟国である日韓の不仲について懸念していることが良く解った。国務省から出向しているある教授からは、日韓の軍人同士の関係について質問があった。
筆者は、「軍人同士は極めて友好的であるが、韓国の政治が良くない。文在寅政権は2015年の『完全かつ不可逆的な』慰安婦合意を反故にしたし、その前の保守政権である朴槿恵大統領も中国の抗日勝利軍パレードに参列したものの、日本は訪問しなかった」と回答したところ大きく頷いていたのが印象的であった。
また、空軍大学の某文官教授は、来月の南北首脳会談と5月の米韓首脳会談の合意事項が大きく異なれば、北朝鮮を利するだけでなく、米韓同盟にも亀裂が入ると懸念していた。
●米国内の対日世論は良好
海軍大学院で筆者の講演を聴講した女性の海軍大尉は、東日本大震災の時、在日米海軍の一員として救援活動にも参加し、その経験などをもとに修士論文として「東日本大震災救助活動後の自衛隊好感度」をテーマに選んだという。大学院側から彼女の論文指導を依頼されたので、訪米前に論文を入手してコメントを加えた。彼女は卒業後、海軍省の東アジア担当部局で勤務することになる模様である。
空軍大学の副学長(少将)も東日本大震災時、青森県の三沢で航空団司令の任にあったことから、震災時の日本人・自衛隊の対応を絶賛していた。こうした事実を通して自衛隊、ひいては一般的な対日好感度が上がり、米国内の対日世論の形成についても、良い方向に向かうことを実感した。米国内では慰安婦像が次々と建てられているが、心ある人たちは決して韓国のやり方を快く思っていない。