公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

国基研ろんだん

  • HOME
  • 国基研ろんだん
  • 受け入れ可能な非核化は何か ジェームズ・アワー(米ヴァンダービルト大学名誉教授)
2018.05.14 (月) 印刷する

受け入れ可能な非核化は何か ジェームズ・アワー(米ヴァンダービルト大学名誉教授)

 多くの日本人、米国人と、少なくとも一部の韓国人は、北朝鮮の狙いに疑いを抱き、平壌からの真の歩み寄りなしに圧力を緩和すべきでないと賢明にも警告している。北朝鮮は過去に何度もそうであったように、対話をして「アメ」を喜んで受け取るが、約束を最後まで守らないだろうという悲観論が多いのも無理はない。トランプ大統領と安倍晋三首相は、真の進展がない限り制裁を緩和しないという強い立場を取るべきだ。結局のところ、北朝鮮が本物の変化への多少の期待を少なくとも与えたのは、ひとえにこれまでの制裁の厳しさによるものだからである。
 仮に金正恩氏が本当に方向転換をする気があるとすれば、日米両国を満足させる有意義な進め方はどんなものになるだろうか。

 ●3段階2カ年計画の提案
 私は核技術の専門家でないし、非核化の実施方法も知らない。しかし、日米同盟の強力な支持者として、3段階の2カ年計画を提案したい。これが実行されれば、平均的な日米両国民は受け入れてくれるのではないかと思う。
 第一段階で、北朝鮮は既存の全ての核兵器と大陸間弾道ミサイル(ICBM)級のミサイルの在庫目録を提示し、その半分を2019年末までに解体することを(査察の保証付きで)約束する。北朝鮮がその約束を検証可能なやり方で完全に実行するのと引き換えに、米国、日本、韓国は対北朝鮮制裁の一部を緩和する。
 第二段階で、2020年末までに北朝鮮は核兵器と長距離ミサイルの残りを廃棄し、地上や洞窟内に貯蔵されている日本や韓国を攻撃可能な中・短距離ミサイルの所在を確認する。一部のミサイルは自衛のため必要と北朝鮮が主張すると思われるので、中・短距離ミサイルの少なくとも所在を確認するよう要求するということだ。これが検証可能なやり方で実行されれば、制裁をさらに緩和する。

 ●制裁は「拉致」解決まで
 第三段階として、同じく2020年までに、北朝鮮に拉致された日本人に関する十分な説明と、生存者の帰国、死亡者の遺骨返還を求める。それを受けて、米国は北朝鮮を承認する。日本と韓国は北朝鮮に経済協力を行う機会が生まれる。ただし拉致問題の解決まで制裁の完全解除は行わない。
 こうした計画は甘すぎ、単純すぎるだろうか。多分そうだろう。しかし、北朝鮮への圧力を緩和する前に、専門家でない平均的な米国人や日本人が容易に理解できるような、真に意味のある義務的な計画が確実に実行されることを私は期待する。
 そうした計画(あるいはそれと同等な計画)が実行されるなら、トランプ大統領と安倍首相へのノーベル平和賞授与が検討されるべきだと思う。(了)