アメリカが国連人権理事会の離脱を表明した翌日、国基研の櫻井よしこ理事長から「この件に関するコメントを」とお電話があり、私は次のようにお答えしました。
まず、アメリカが同理事会を脱退したのは、国として当然の対応だと思います。ニッキー・ヘイリー米国連大使は、国連人権理事会は「政治的偏見のはきだめ」だと批判しています。ヘイリー大使は、「偽善と自己満足」に満ちた組織が「人権を物笑いの種にしている」とも述べておられますが、これも国連で活動したことがある人間なら、だれもが感じることではないでしょうか。
●脱退は現状では時期尚早
これを受けて、日本はどうするべきでしょう。私は、日本がアメリカに倣って脱退までするのは、現状では「時期尚早」と考えます。
我々は、「国際連合」という組織について、子供のころ、学校でこう習います。
「日本は戦前、『国際連盟』を脱退して第2次世界大戦に突き進んでいった。戦後『国際連盟』に代わり『国際連合』という組織ができ、世界の平和維持に寄与している」
この「連盟」脱退のトラウマもあり、過度の「国連偏重主義」に陥っている国民がほとんどであり、国連が「政治的偏見のはきだめ」になっているとの認識がある人はごくわずかです。国連の実態について国民がほとんど理解していない中で、いきなり、「アメリカがやったから、日本も」と脱退することはとても困難です。
では、現在、日本が国連に対し、取ることのできる対応はなにか。私なりに考えているのは次の2点です。
日本の分担金はアメリカに次いで世界第2位。ならば、この多額の分担金を交渉カードに使うべきでしょう。裏金を使ってまで工作をしている国があるようですが、日本はそんなことをする必要はありません。今一度、「交渉カードとしての分担金」という意識で臨んでいただきたい。
●国益損なう条約は破棄を
例えば日本は「拷問等禁止条約」を批准していますが、日本には公権力を使った拷問は存在しないのだから、「日本では解決済み」として条約を破棄すればよい。この条約を批准しているため、拷問禁止委員会で、存在しなかった性奴隷(慰安婦への拷問)について国連から謂れなき非難の勧告を受け続けているのです。
日本は、戦後結んだ条約を何一つ破棄していません。これはおかしい。外国人の土地取得の問題についても、世界貿易機関(WTO)の「サービス貿易一般協定」(GATS)が加盟国間の内国民待遇義務を定めているため、日本人に対する土地の権利と協定加盟国であれば外国人に対する権利とで格差があってはならないというのです。
不必要な条約は見直すべきです。これをやらなければならない時期に来ている。今後、国連に対し、こういった交渉ができるよう、政治家としてしっかり道筋をつけて行きたいと思います。