11月5日付の「今週の直言」で、西岡力氏が、朝鮮人の戦時労働を「日本企業の反人道的不法行為」だとした韓国最高裁の判決を批判した上、「ところが日本では、政府も、多くのマスコミや識者も、その事実認識が間違っていることを批判しない」と指摘している。
●議論が本筋逸れていないか
そして「このままでは、『過酷な強制労働をさせたことは事実だが、日韓はそれへの補償が1965年の協定で終わっているのかどうかで争っている』という間違った認識が国際社会に定着しかねない」と強い危惧の念を表明している。
まさに日本メディアの英語版はそうした誤解を広げる方向に動いている。
例えば朝日新聞の10月31日付社説「徴用工裁判 蓄積を無にせぬ対応を」の英語版は、原文の「徴用工」を一貫してforced laborers(強制労働者)と訳している。
ジャパン・タイムズの10月31日付の記事は、冒頭の写真説明で、原告をvictims of forced labor(強制労働の被害者)と説明している。Kyodo, Staff Reportとなっているので、共同配信記事にジャパン・タイムズの記者が加筆したものだろう。
●「慰安婦」同列に置く意図は
そして記事のまとめにおいて、「(日韓の)論議を呼ぶ問題は強制労働させられた韓国人だけでなく、『慰安婦』-第二次大戦前から戦時中に日本兵に性の提供を強いられた女性や少女を指す婉曲語-の問題も含まれる」(Contentious issues include not only South Koreans who were subject to forced labor, but also the issue of “comfort women” — a euphemism that refers to women and girls forced to provide sex for Japanese troops before and during World War II.)と慰安婦問題にも触れ、わざわざ誤った認識を国際的に発信している。
なお、判決当日のNHKの英語版ラジオ・ニュースも「徴用工」について誤解を招く説明をしていたと記憶する。移動中の電車内で聞いたもので、手元に録音資料がなく確認できないのが残念だ。関心と手段をお持ちの方に検証頂ければ幸いである。