公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2019.02.21 (木) 印刷する

トランプの対北姿勢に変化はない 島田洋一(福井県立大学教授)

 2月19日、トランプ米大統領と文在寅・韓国大統領が電話会談を行い、韓国大統領府によれば、その中で文氏は、北朝鮮の非核化措置を引き出すため、南北の鉄道・道路連結や経済協力事業を活用して欲しい、それが「米国の負担を減らせる道だ」などと強調したという(産経、2月20日)。核兵器を温存しつつ周辺的措置で制裁緩和を勝ち取っていくという北の作戦をバックアップする立場を改めて示したわけである。

 ●日米間に大きな齟齬なし
 米韓電話会談を受けてトランプ氏が、北の非核化を「何ら焦っていない」(no rush whatsoever)というコメントを発したことが話題になった。
 トランプ氏の言葉を子細に見ておこう。
 非核化を究極的に目指すが、「何ら差し迫った日程表は持たない」(no pressing time schedule)。なぜなら「制裁が維持されているから」(the sanctions are on)。「(核・ミサイルの)実験がない限り、私は何ら焦らない。もし実験がなされれば、別のディールになる」(As long as there’s no testing, I’m in no rush. If there’s testing, that’s another deal)というものである(ワシントン・ポスト紙、2月20日)。
 つまり、北が再び核・ミサイル実験に踏み切ればより強硬な手段を考えるが、そうでない限りは制裁の維持で非核化を促すということである。米側が文在寅氏の要請をはねのけ、この立場を堅持する限り、日米間に大きな齟齬は生じないといえよう。

 ●制裁緩和の誘いに乗るな
 米情報部は多数意見として、北の大陸間弾道弾(ICBM)はまだ大気圏への再突入技術と地上数百メートルで爆発させる精密起爆技術が未完成との見方を採っている。
 例えば、国防総省が1月17日に公表した「ミサイル防衛の見直し(MDR)」は従来通り、北が米本土に核ミサイルを打ち込む能力確保の「時が近づいてきた」(North Korea has neared the time when it could credibly do so.)としており、「完成した」とは記述していない。
 トランプ氏の上記発言に目新しい要素はない。むしろこの線を維持してくれるならひとまず安心とすら言える。
 いま重要なのは、米側が間違っても韓国の誘い水に乗らないよう、日本からしっかり「制裁堅持」の意志を発信していくことである。