公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2019.02.25 (月) 印刷する

ファーウェイ製品の恐ろしさ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 中国通信機器大手ファーウェイの創業者で最高経営責任者(CEO)の任正非氏が1月、4年ぶりにメディアの前に現れ、「中国当局に機密情報の提出を求められても応じない」と述べた。同社製品については、米国のトランプ政権が中国政府の意向に沿ってスパイ活動ができるようになっていると批判している。
 中国外交トップの楊潔篪中国共産党政治局員も2月中旬にミュンヘンで行われた安全保障会議で、「中国の法は企業に情報収集を求めていない」と述べているが、いずれも説得力を欠く。中国は2017年6月施行の国家情報法11条で「国外の機関、組織、個人が実施した(中略)情報の提供を行わなければならない」と定めているからだ。

 ●スパイの同行容認と同じ
 ファーウェイ(ZTE社製も同じ)の移動式Wi-Fiルーターが外部と情報交換をしていることを突き止めるのは、そのままでは発信電波が暗号化されていることから難しい。しかし、ファーウェイ製のパソコンが、勝手に外部と情報交換をしている実態は突き止められている。専門家から、横軸に時間を縦軸に通信量を示したグラフを見せてもらった。1週間のうち日曜日だけ活動が休止しているのは、情報収集要員も日曜だけは休みたいのであろう。
 パソコンにはカメラとマイクが内蔵されている。GPSによる位置情報も入手できる。即ち、パソコン所有者が何処で何をし、何を語ったかが全て筒抜けに送信できるのだから、スパイを同行させているのと同じだ。次世代通信システム「5G」の世界になれば、物のインターネット化(IoT)の進展に合わせ、使用者周辺の個人情報はこれまでと比較にならないほど筒抜けになる可能性がある。

 ●安物買いの「情報」失いに
 個人情報の外部流出で訴えられないようファーウェイ製品の利用規約は定められている。仮にファーウェイ社製のパソコン利用者が、個人情報が抜かれていることに気づいて訴訟を起こしたとしても「利用規約の通り。貴方はそれに同意したでしょ」と開き直れるような仕組みになっているという。
 欧州諸国は、未だファーウェイ製の使用を禁止する国は少ない。他社製品に比してファーウェイの製品が格安だからであろう。「安物買いの『情報』失い」にならないよう願うばかりである。