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2019.02.27 (水) 印刷する

挺対協を批判する保守派サイトの良心 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)

 先に紹介したように韓国の若手保守派によるニュースサイト「メデイア・ウォッチ」が、元慰安婦証言の嘘と支援組織と北朝鮮とのつながりについて全面的に告発するキャンペーンを行っている。
 同サイトは、若手ジャーナリストで保守運動家の辺熙宰氏らが2009年に始めたものだ。2015年頃から韓国での慰安婦問題の取り上げ方に疑問の声をあげ、2018年から最近まで多くの長文な批判記事をアップして大キャンペーンを展開している。

 ●訴訟攻勢にも怯まず
 最初の頁に大きな文字で「大韓民国国民は挺対協を従北だと呼ぶ自由と権利があります」という文が出てくる。そこをクリックすると、挺身隊問題対策協議会(挺対協)と同組織が看板として使い続けてきた元慰安婦、李容洙氏に対する激しい批判の記事があふれている。
 挺対協幹部の夫とその妹が北朝鮮と内通した容疑で実刑判決を受けたこと、同組織が北朝鮮と活発に交流していること、反米親北政治活動に積極的に加担してきたこと-などを事実に基づき批判している。李容洙氏の証言が時期によって大きく変化していて信憑性に欠けること、彼女が他者の批判を一切受け付けない傲慢さなども紹介している。
 メデイア・ウォッチは挺対協から名誉毀損で刑事、民事の両方で訴えられた。刑事事件は検察が根拠なしとして却下し、民事訴訟でもメデイア・ウォッチ側が勝訴した。サイトにはその裁判資料や判決もアップされており、「大韓民国国民は挺対協を従北だと呼ぶ自由と権利があります」という呼びかけにつながっている。

 ●大手メディアの誤報も暴く
 メデイア・ウォッチと辺氏は2016年秋、突然のように朴槿恵大統領に対する非難が高まったとき、その口火を切ったテレビ局JTBC(中央日報系のニュースチャンネル)が取り上げたタブレットパソコンが偽物だというキャンペーンを行った。JTBCはスクープ報道だとして朴槿恵大統領の友人である崔順実氏が使っていたタブレットパソコンの中に、朴槿恵氏が国政に関わる秘密文書を不法に送ってアドバイスをもらっていたと大々的に報じていた。
 他の大手メディアは全てそれを事実であるかのように後追い報道し、朴槿恵大統領を追い詰めた。ところが辺氏らの調査で、実はそのタブレットが崔氏のものではなく、崔氏自身そもそもタブレットの操作さえできないという驚くべき事実を突き止めて、朴槿恵大統領弾劾に反対する中心勢力の1つとなった。弾劾成立後も継続してJTBC批判を続けた。

 ●「反日差別」も大胆に批判
 また、日本との歴史問題についても大胆に反日差別主義を批判する言論活動を続けた。昨年春、筆者(西岡)のところにメデイア・ウォッチからメールで連絡があり、これからソウルの日本大使館前の慰安婦像を撤去すべきだという運動を現場で行う予定だ、日本人拉致被害者救出にも取り組みたい、日本の保守派と連携交流したいなどと伝えてきた。
 ところが、その直後の6月にJTBC側が名誉毀損で刑事告訴した辺氏が逮捕・起訴され、拘束されたまま裁判を受け、12月に1審で懲役2年の実刑判決を受けた。
言論人を逮捕して拘束状態に置いたまま裁判を受けさせることは言論の自由に反する弾圧である。昨年9月には韓国を代表する保守知識人の趙甲済氏や洪熒氏(統一日報主幹)ら130人が釈放を求める意見広告を朝鮮日報に掲載している。
 韓国の保守派の中では、辺氏の逮捕が日韓保守連携を主張し始めたタイミングだったことを指摘して、朴槿恵弾劾の不当性が日本に広まることを恐れた文在寅政権内の勢力が検察を動かしたのではないかと疑う声が出ている。