中国は4月23日、海軍創設70周年を記念して山東省青島沖で国際観艦式を行った。空母「遼寧」のほか、巡洋艦に匹敵する1万トン超のアジア最大級の新型駆逐艦「南昌」や新型原子力潜水艦など艦艇32隻、戦闘機など39機が参加した。「世界一流の海軍建設」を掲げる習近平国家主席(中央軍事委員会主席)は急速に近代化した海軍力を内外に誇示した。新華社電によると、習氏は観艦式に臨んだ各国代表団に「武力に訴えたり威嚇したりしてはいけない」と語った。
●米国は艦艇も派遣せず
しかし、昨年の9月末、南シナ海で「航行の自由」作戦を行っていた米駆逐艦「ディケイター」に中国艦が約40mの至近まで異常接近する一触即発の事態を起こすなど、習発言と中国側の実際の行為には大きな乖離がある。
米国は今回、艦艇や本国からの高官派遣を見送った。読売新聞に対し米海軍当局者は、「米政府は(行動の)結果を重視し、(衝突の)危険を減らすことに焦点をあてた両国関係を求めている」と語ったが、「米海軍は、建設的な中国海軍との対話という重要な目標を追い求め続ける」とも指摘し、中国側の対応に変化があれば、関係改善の用意がある点も強調した。
南シナ海や台湾周辺を重要な海上交通路としている我が国にとっても、中国の人工島建設、軍事化や台湾周辺での威嚇行為は国益上好ましくない。国際仲裁裁判所は2016年7月、南シナ海における中国の主張を国際法上根拠がないと退けたにも拘らず、中国はそれを「紙くず」として意に介さないばかりか、人工島で一層の軍事化を進めている。
また尖閣諸島周辺海域でも、中国海警は領海侵犯を繰り返している。船の数も最近は3隻から4隻に増加し、武装もエスカレートしている。
●中国の行動改善が先だ
にもかかわらず、日本は今回の中国観艦式に海自トップの山村浩海上幕僚長が参加した。あわせて護衛艦「すずつき」も派遣した。海幕長の訪中は2014年4月以来約5年ぶりで、海自艦艇の訪中は11年12月以来となる。信頼関係の構築や防衛交流の進展を図ることが目的としているが、日本の意思を示す上でも、また日米同盟の観点からも疑問なしとしない。
2009年に行われた中国海軍創設60周年に海自艦は招待されていない。また同年8月に予定されていた海自遠洋航海部隊の香港訪問は中国側によってキャンセルされた。亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル主席の入国を日本が認めたことなどに中国側が不満を示したといわれている。しかし同年11月の中国艦艇の江田島訪問の際は日本側が受け入れている。
翌2010年9月には尖閣列島周辺海域において中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした事案から、海自練習艦隊の青島入港が取り止めとなった。中国は防衛交流をしばしば外交ツール(メッセージ)として利用する。
今回、日本も米国と足並みを揃え、「中国の行動改善がまず必要だ」とのメッセージを出すべきではなかったか。王毅外相の「中日関係は正常な軌道に戻った」などという甘い言葉に踊らされるようでは日本は「与し易し」と侮られるだけである。