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2020.05.11 (月) 印刷する

日本のコロナ対応、海外の批判はお門違い 石川弘修(国家基本問題研究所理事・企画委員)

 新型コロナウイルスの感染拡大に対し政府の緊急事態宣言の期間が延長されたが、朝日新聞などの左派、リベラル・メディアの報道によると、日本の対応に対する海外からの批判が相次いでいる。が、批判の中身には2つの点で違和感を覚える。
 5月8日付けの朝日新聞は、感染の有無を調べるPCR検査について取り上げ、英紙ガーディアンや在日ドイツ大使館が「日本の検査数の少なさ」を指摘したと報じた。また、米紙ワシントン・ポストは「無症状の患者にも広げるべきだ」と伝えた。在日米国大使館は4月3日、「日本政府が検査を広範には実施しないと決めたことで、罹患者の割合を正確に把握するのが困難になっている」と指摘し、日本を訪れている米国民に帰国を求める注意情報を発した。

 ●批判されても少ない日本の死亡数
 一方、外出規制について仏AFP通信は「あくまでも自粛要請であって、徹底させる強制力がない」と報じ、英ロイター通信は「政府が出す措置が小出しで遅いため、有権者の支持を失っている」と安倍政権批判にまで及んでいる。
 確かに筆者も、日本の対応が特に初期段階で遅く、強制力のある規制があってもいいのではないかとの印象を持っている。だが、都市封鎖など強制的な規制を実施する欧米での感染による死亡者数は、10日午前零時現在、米国7万7000、英国3万、イタリア3万、フランス2万6000にも達しているのに対し、規制が弱いと批判される日本は600人余と圧倒的に少ない。
 国民の自主性に頼っている日本だけに、将来、感染が急拡大する恐れもあるが、少なくとも現段階では、欧米からの批判は「お門違い」との反発を覚える。

 ●発信元は日本の左派、リベラル
 第2の違和感は、欧米の対日批判が、朝日など日本の左派、リベラル・メディアやリベラル識者の見解を下敷きにしていることだ。リベラルの記者が牛耳ることでも知られる日本外国特派員協会(FCCJ)を発信源にしているケースも多い。
 例えば、英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司教授は、7日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」でWHO(世界保健機関)上級顧問と紹介され、「全国民にPCR検査を」と訴えた。渋谷氏は、4月23日には東京のFCCJでオンライン記者会見にも登場し、同30日のBBCニュース(電子版)では同社の東京特派員に対して「日本の感染者数は当局発表の20倍から50倍多く、28万人から70万人が感染している可能性がある」と語ったという。
 また、上智大学の中野晃一教授は、2月26日付ニューヨーク・タイムズ(電子版)のオピニオン面で「感染拡大への日本政府の対応は驚くほど無能」とこき下ろした。中野氏は、いわゆる慰安婦問題で日本批判のドキュメンタリー映画を製作したミキ・デザキ監督の指導教官だ。不当な扱いを受けた出演者らが上映差し止めなどを求めて裁判を起こしている。
 いってみれば、コロナ禍を巡る外国メディアの対日批判は、日本の左派、リベラル・メディアやリベラル識者自身が外国メディアを利用して発信しているということだ。これは朝日が謝罪・訂正に追い込まれた「慰安婦報道」と同じパターンではないか。