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2020.07.13 (月) 印刷する

総理・総裁狙うならまず対中政策示せ 有元隆志(産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人)

 自民党の二階俊博幹事長は自他ともに認める「親中派」である。自民党外交部会などが香港統制を強める中国の香港国家安全維持法に抗議し、習近平国家主席の国賓来日中止を求める決議案をまとめたときも、「日中関係を築いてきた先人の努力を水泡に帰すつもりか」と不快感を示し、決議案を後退させた。二階氏の認識は間違っている。一方的に現状を変更しようとしているのは中国だ。

岸田、石破両氏の二階詣で

決議案をまとめるよう指示した岸田文雄政調会長は二階氏と会談し、氏の意向に沿って、「中止を要請する」から、「党外交部会・外交調査会として中止を要請せざるを得ない」と表現を変えることに応じた。石破茂元幹事長は派閥会合で「礼儀は礼儀としてきちんと尽くさないといけない。その上で言うべきことは言うことが必要だ」と述べ、外交部会の動きを批判した。

岸田、石破両氏には安倍晋三首相の自民党総裁任期が来年9月に切れるのをにらみ、実力派幹事長である二階氏の支援を得たいとの思惑があるとみられる。特に、石破氏は二階氏同様、日中国交正常化を成し遂げた田中角栄元首相を師として仰ぎ、石破派の9月の政治資金パーティーでの講演を依頼するなど二階氏に秋波を送っている。

駐日中国大使だった程永華氏は二階氏を特集したNHK番組で『信は万事のもと』。国交正常化のときに、周恩来総理と田中総理の間で交わされた言葉です。最後はお互いに『信』を大事にしようと。日中関係がいろいろとあっても一貫して交流を続けるという、二階幹事長にはそのぶれない一線がありますと語っている。

当時はいざ知らず、いまの中国指導部は香港、ウイグル、尖閣諸島(沖縄県石垣市)など諸課題に強硬姿勢で臨み、国際社会の信頼を失っている。二階氏が一方的に「信」を置いても相手に利用されるだけだ。

「先人」の失敗をどう総括

二階氏が言及した「先人」たちは、天安門事件後の1992年10月、天皇陛下の訪中に踏み切り、対中支援に走った。いまでは中国の軍事力は日本をはるかに上回っている。二階氏は尖閣諸島の棚上げ論に言及しているが、中国公船は尖閣に毎日侵入してきている。

「国難」ともいえる状況の下、「安倍四選」を認めないというなら、「ポスト安倍」をねらう候補は、今後中国にどのように向き合うかを具体的に示すべきである。旧態依然の「日中友好」の世界で生きている二階氏の支援を受けた「親中政権」が誕生するようなことがあってはならない。