7月10日、99歳の生涯を閉じた韓国の英雄、白善燁将軍に対する文在寅政権側の冷遇が自由世界の心ある人々を怒らせている。白将軍が逝去したのは10日の午後11時だが、同じ日の零時過ぎ、セクハラで告訴されて自殺した朴元淳ソウル市長の死体が山中で発見されている。つまり、ほぼ同じときに、韓国の国是である反共自由民主主義を守るために命がけで戦った英雄と、国是を崩すために左派市民運動家、人権弁護士、政治家として活動してきた偽善者が亡くなったのだ。
文大統領は弔問すらせず
ソウル市は破廉恥罪の容疑者で職を放棄して自殺した市長の葬儀をソウル市が主催する「ソウル市葬」とし、ソウル中心部にあるソウル市庁に弔問所を設けた。一方、朝鮮戦争の英雄である白将軍の葬儀は国葬とならず、陸軍葬とされた。冷遇に怒った若者らの保守運動体・新全大協が、ソウル市庁のすぐ北にある光化門広場に市民弔問所を設置した。4日間約10万人(主催者発表)の白将軍を尊敬する人々が全国からその弔問所を訪れた。ところが、ソウル市は市民弔問所を「違法施設物」だとして、弁償金330万1750ウォン(約29万5430円)を徴収すると発表した。
白将軍の葬儀は15日に執り行われ、遺体はソウルにある顕忠院(国立墓地、朝鮮戦争戦死者を埋葬するため1955年に作られた。その後、軍人だけでなく独立運動家や国家元首なども埋葬対象となった)でなく、その分院である大田顕忠院に埋葬された。
米国大使と在韓米軍司令官はソウルでの葬儀だけでなく大田での埋葬式まで同行して、英雄への敬意を表したが、文在寅大統領は一度の弔問さえしなかった。
大田の顕忠院入り口では、光復会や民族問題研究所など従北左派団体が「親日反民族行為者白善燁の大田顕忠院埋葬反対」「顕忠院ではなく靖国に行け」などと叫んで、埋葬式を妨害した。
政府機関である国家報勲処は葬儀の翌日の17日、大田顕忠院のウエブページの白将軍の欄に「大統領所属親日反民族行為真相究明委員会で親日反民族行為者として決定(2009年)」と書き込んだ。
埋葬式も妨害する韓国の左派
金大中大統領の三男である金弘傑議員(与党・共に民主党)はSNSに「親日派軍人の罪状は日帝強占期に終わったのではなく韓国戦争中の住民虐殺や軍事独裁に協力したこともあり、戦争で立てた功績だけでは許されない」と書き込んだ。
すでに共に民主党の一部議員らは「顕忠院に安置されている親日派人士の墓を破壊しなければならない」とする国立墓地法改正案を提案している。この法案は、埋葬式を妨害した光復会や民族問題研究所などが、数年前から左派議員らに立法化を求めて運動してきた反日4法の1つだ。ちなみに残り3つは、親日発言処罰法、親日派子孫財産没収法、親日派受勲取り消し法だ。
北朝鮮も白将軍攻撃に参加した。20日、北朝鮮の宣伝媒体「柳京」は「親日反民族行為者は靖国神社に行け」という記事で「最近、南朝鮮では白善燁の死を契機にして親日売国奴であるこの者を英雄として美化する保守の輩の妄動を糾弾する各界各層の声が高まっている」と書いた。
文在寅政権とその支持層は70年代末から80年代に、北朝鮮の政治工作の結果、韓国社会に急速に広まった反韓自虐史観の信奉者らだ。韓国の建国以来の歴史は、白将軍や朴正熙大統領ら日本統治時代に日本に協力した親日民族反逆者が清算されず、支配層に居続けて、民族の正統性を踏みにじってきた、だから主流勢力を全て「積弊」として清算しなければならないという、歪んだ歴史観だ。その歴史観に立つから、日本と戦ったとされる金日成が建てた北朝鮮が民族の正統性を継承しているとされるのだ。
中共率いる抗日ゲリラとも戦う
なお、白将軍は1942年に満州国軍官学校を出て満州軍の将校となっている。これを反韓勢力が「親日民族反逆行為」だと言い募っているのだが、白将軍が満州軍将校として戦った相手は中国共産党が率いる抗日ゲリラであって、独立運動家ではない。抗日ゲリラには一部朝鮮人も加わっていたとされるが、彼らは共産主義革命を目指していたのであって、朝鮮独立を目指した独立運動家ではない。
独立運動の英雄で建国の父であり、激しい反日政策をとり続けた李承晩大統領は、朝鮮戦争休戦直後の1954年の声明で親日派問題について次のような合理的な整理を行った。植民地時代にいくら高い地位にいたとしても、建国の事業に参画して大きな功績を挙げたなら、その者はすでに親日派ではない、目立った親日の過去がなくても内心、日本が再び戻ってくることを待っているなら、その者こそ清算されるべき親日派だ。
救国の英雄である白将軍の評価を巡る韓国の混乱の根本には歴史観の戦いがある。