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2020.11.27 (金) 印刷する

【韓国情勢】韓国で盛り上がる「アンチ反日」運動 西岡力(モラロジー研究所教授・国基研企画委員)

 本欄でも、これまで何回か紹介してきたように、韓国で慰安婦問題、戦時労働者問題について、歴史の真実を知り、それを広く韓国社会に広める活動が活発化している。

「反日銅像真実糾明共同対策委員会」という団体が中心になっている。同委員会は『反日種族主義』の著者のひとりである李宇衍氏、弁護士の金基洙氏が共同代表。彼らは昨年12月から毎週水曜日、ソウルの日本大使館前の慰安婦像の近くで、正義連(旧挺対協)が行っているいわゆる水曜集会に時間を合わせ、慰安婦像撤去、水曜集会中止集会を対抗して開いている。

当初は、過激な反日主義者らから暴行を受けることもあったが、今も毎週、続けている。その様子は「李宇衍博士らが出した慰安婦像撤去を求める声明」でも紹介したが、最後の方には暴行を受けている李宇衍氏の写真も載せてある。

最近、李宇衍氏らは、日本政府がもっと積極的に歴史の真実を広報するよう求め、そのためにはまず、1996年に日本外務省が国連に一度提出しながら、すぐに取り下げてしまった「クマラスワミ報告に対する反論文」を公開せよと要求している。李宇衍氏らが出した声明を翻訳して以下に紹介する。

過去の記事はこちら

日本政府は慰安婦問題を悪化させる無気力から
抜け出さなければならない

 
韓国の慰安婦被害者らと遺族らが日本を相手に提起した損害賠償訴訟裁判が結審した11月11日、元日本軍慰安婦の李容洙氏は、朴槿恵政府が日本政府と慰安婦問題について合意をしたことに対して、「自分たちが勝手にいたずらしたことだ、その上10億円まで受けとった。 なぜまた受けとったのか」と話した。

李容洙氏の主張は2015年の「韓日日本軍慰安婦合意」当時、安倍晋三日本国総理が軍の関与を認めた1993年の「河野談話」を否定したのではないかという主張であるようだ。

しかし、合意の第1項では「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している……癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明」すると明らかにしている。

また、第2項では「日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷を癒すための事業を行うこととする」として「和解・治癒財団」設立の必要性を述べている。

したがって、韓日慰安婦交渉は河野談話の延長線上において成り立ったと見られる。そして「和解・治癒財団」が女性家族部(省)によって一方的に解散させられるまでに、合意当時の生存慰安婦被害者46人中37人と、死亡者199人中58人の遺族が、財団からそれぞれ1億ウォンと2000万ウォンの支援金を受領した。このことから、上記のような李容洙氏の主張は80%に該当する受給者の希望と、かなりのひらきがあることが分かる。

李容洙氏の事例でも分かるように、この間の慰安婦支援団体の主張は「被害者中心主義」に基づいた国連の「クマラスワミ報告書」(1996年)を根拠としている。「慰安婦合意」にもかかわらず、日本政府の立場が苦しいのはこの報告書のためだ。

だが実は、この報告書は嘘だと明らかになった。吉田清治の証言と元慰安婦の陳述にだけ依存していて信頼度に問題が生じている。このことを知っていた日本は1996年、外務省が反論文書を国連に提出したが、すぐ撤回してしまった。

当時、国連の雰囲気が女性および性の問題で沸き立っていて、慰安婦について論争を行うことは、あまりに政治的負担が大きかったためだ。それで代案として登場した解決策が、フィリピン、韓国、台湾、インドネシア、オランダなどの被害者を対象にした「アジア女性基金」であった。これを通じて韓国でも60人(あるいは61人)が1人当り500万円(医療支援金200万円、福祉支援金300万円)を受領することになった。

日本政府としては相当な成果を上げたといえるのに、それ以後も韓国では問題が突出し続けると「慰安婦合意」という後続措置を取ったのだった。ここで韓国内の支援団体と少数の人々が反発して事態は手のほどこしようもなくなり国際的に拡大している。

台湾外交部は韓日間の慰安婦合意結果をそのまま台湾の慰安婦被害者にも適用しなければなければならないと明らかにしたし、フィリピンでは慰安婦被害者団体が立ち上がってフィリピン政府も日本に慰安婦問題を提起しなければなければならないと求めた。オランダ政府はアジア女性基金を通じて日本は十分な謝罪を行ったという立場であるにもかかわらず、オランダの慰安婦被害者権益団体である「日本名誉負債財団」は追加謝罪を要求している。中国でも慰安婦問題に対する日本の責任ある姿勢を求めている状況だ。

韓国と日本の間では、来年1月に予定される慰安婦裁判の判決が、2018年の強制徴用に対する大法院判決のようなものになれば、両国の外交は取り返しのつかない破局に陥ることになる。そして、その他の国でも、被害者に対する追加要求はずっと続くと予想される。

したがって日本政府としてはクマラスワミ報告書に対する1996年の外務省反論文をまず国際社会に公開することによって、歴史的事実関係の追及に積極的に取り組まなければならない。日本政府が無気力から抜け出すことを求めるものだ。

2020年11月18日
反日銅像真実糾明共同対策委員会