公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2021.09.21 (火) 印刷する

アフガン救出作戦失敗の検証は何処へ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

アフガンからの邦人等救出作戦からほぼ1カ月が経過した。この作戦については、当時から多くの有識者や国会議員らが、失敗であり、原因の究明が必要だと強く主張していたにもかかわらず、いまだに政府から検証の概要すら出てこないのはどうしたことか。

同じように救出作戦に失敗したオランダでは、外務・防衛の両大臣が遅延かつ混乱した作戦の責任をとって辞任する事態に至っている。

よもや政府は自民党総裁選にかまけて頰被りするつもりではあるまいが、この問題の究明は日本にとって、台湾や朝鮮半島有事の際の邦人等救出作戦を行う上で避けては通れない。十分な検証を行い、将来に向けて禍根を残さない対策を講じなければならない。

大使館員の退避時期は適切だったか

今回の作戦で解せないのは、アフガン政府崩壊とともに12名の大使館員が早々とドバイ経由でトルコのイスタンブールに退避したことである。その中には防衛駐在官(2等陸佐)も含まれていたはずだ。カブール空港で米軍をはじめとする北大西洋条約機構(NATO)軍と情報を共有し、救出作戦の前面に出なければならないのは防衛駐在官である。台湾には2万人以上の在留邦人がいるが、日本大使館にあたる日本台湾交流協会の防衛駐在官は退役自衛官だ。政治事情によるものとはいえ、これで良いのか。大使館員はまた、アフガン国内で日本政府に協力してくれた現地人が誰で、どこにいるのかを掌握していたはずだ。

筆者が在米日本大使館の防衛駐在官であった1998年5月、アジア通貨危機に伴ってインドネシアではスハルト大統領が失脚し、政情が不安定化したことから自衛隊による非戦闘員の救出作戦(NEO)が検討された。結果的に民間航空機のチャーターによる救出が行われ、NEOは発動されなかったが、赴任前に外務研修所で席を同じくした在インドネシア日本大使館の防衛駐在官(1等海佐)はこの時、日本人学校に通う児童の交通整理に使われていたと後日、語っている。

8月15日のアフガン政府崩壊時点で現地の日本大使は衛生休暇で帰国中だったというが、代わりの臨時大使はどんな判断を下したのか。防衛駐在官を含む大使館員の使い方で適切な判断をしたのかについては是非とも知りたいところである。

野党もダンマリ決め込むつもりか

日本の国家安全保障会議(NSC)が自衛隊輸送機の派遣を決定したのは8月23日であるから首都カブールの陥落が伝えられてから1週間以上が経過している。何故それまでNSCが開けなかったのか、納得のいく説明が必要だ。

こうした問題こそ、野党は追求しなければならないはずなのに、なぜかそうした声は聞こえてこない。長年「自衛隊海外派遣反対」と叫んでいた野党だから、都合が悪くなったらダンマリを決め込むつもりなのか。これについても明確な回答が欲しい。