公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2021.09.21 (火) 印刷する

自民総裁選討論会と日本記者クラブの偏向 石川弘修(国基研理事)

自民党総裁選に立候補した河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子の4氏による討論会が9月18日、日本記者クラブの主催で開かれた。討論は約2時間にわたったが、質問内容は必ずしも国民の関心事を反映していたとは言えない。各候補に与えられた発言時間にも差が目立った。

候補によって発言時間に倍の開き

日本記者クラブ主催の討論会は、これまでも総選挙前に各政党党首を招くなど、度々開催されてきた。今回は、朝日、毎日、日経、読売の全国紙の論説委員4人が会員の質問などを踏まえ、代表質問を行った。

高市氏の政策後援会などによると、河野氏の発言時間は合計20分余。これに対し、高市氏は11分にも届かなかった。これは全21の質問のうち、後半の7問が河野、岸田両氏に対してだけ行われたからだ。しかも、質問は、日中、日韓、北朝鮮関係や憲法(これは岸田氏にだけ質問)、核燃料サイクルなど安全保障上重要な問題ばかりである。

代表質問者側は、外交問題でもあり、外相経験のある2人に絞ったというが、高市氏なら、例えば敵基地攻撃能力の保持に対する不明確な河野氏の発言に絞って反論、交渉などはポーズだけで力にしか反応しない中国には米国の中距離ミサイルを日本国内に配備するしかないなどと強く訴えたであろう。中国は日本を射程に入れた短、中距離ミサイル約2000発を保有しているといわれる。

3氏の中で、岸田氏が2015年の慰安婦問題日韓合意について言及し、この国際合意を守れないならば、今後、韓国政府と交渉する意味がなくなると明言したことは重要である。

憲法改正で与えられた発言時間は1分半弱、女系天皇問題では1分50秒弱しかないという極めて限られた中で、過去の森友・加計問題や桜を見る会に5分近くも費やすのは、新総裁への視聴者の関心との間にズレを感じさせた。

ネット調査では高市氏支持が圧倒

日本記者クラブは新聞、通信、放送各社などで構成されているが、ネットメディアは加盟していない。総裁候補の支持率調査では両者間には大きな違いが出ている。

例えば、共同通信が17、18の両日行った自民党員対象の調査では、新総裁に河野氏を望んだ回答者は48.6%なのに対し、岸田氏18.5%、高市氏15.7%と大きな差がついている。だが、ネット情報をみると、朝日のネット情報、AERAドットでさえ、出馬表明の再生回数の比較で、河野氏の22万回に対し、高市氏は211万回と圧倒的に強い関心が寄せられている。また、別のネット支持率調査では、投票数25万人のうち高市氏が61.8%と断トツで、河野氏(26.6%)、岸田氏(7.8%)、野田氏(3.7%)に大差をつけている。

こうしたネットメディアでの高市氏に対する関心の高まりは、日本で初の女性首相誕生に対する期待感も背景にあるようだ。

既存メディアの世論調査などを背景にした記者クラブ主催討論会の偏りを避けるため、高市氏の政策後援会は、日本記者クラブに対し運営の是正を強く求めている。討論会を実行するのはクラブの企画委員会だが、構成は左寄り、リベラルの委員が多い。バランスを欠いていると言えないか。