平成30(2018)年の民法改正により、成年年齢が18歳に引き下げられ、令和4(2022)年4月1日から施行される。これにともない刑事裁判の裁判員の年齢も現在の「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられる。
裁判員法13条で、裁判員は衆議院議員の選挙権を有する者の中から選ばれることになつてゐる。ところが、選挙権は公職選挙法の改正により平成28年から18歳に引き下げられたものの、その際、選挙人名簿から選ばれた裁判員候補者名簿については20歳未満の者を削除することゝされたので(公職選挙法附則10条)、18歳から20歳未満の者は、これまで選挙権はあるが、裁判員に選ばれることはなかつた。
少年法の〝据え置き〟こそ問題
我が国の、20歳といふ成人年齢は、明治9(1876)年の太政官布告にさかのぼり、明治29年の民法で定められた長い歴史をもつてゐるが、今回の民法改正で、世界の大勢に従つて改められたのである。
民法上の未成年制度は、「幼年から成人に至るまでの知能発達上の具体的差異を問題としないで行為能力(たとへば契約の締結など)の限界を一定の年齢で一律的に画することによって、法律行為の能力を明確にする法的技術である」(川島武宜『民法総則』175頁)。例外は婚姻した者で、未成年者でも成年に達したものとみなされた。
今回の民法改正前は、男は18歳、女は16歳になれば結婚できるとされてゐたが、民法改正により、婚姻開始年齢も男女ともに18歳に統一された。
この未成年制度は、民法上のみならず、刑事法や、上記のとほり選挙権などの公法上の制度にも広く適用されてきた。たゞし、被選挙権は、衆議院議員は25歳から、参議院議員は30歳から―など異なる。
民法の改正と同時に少年法の改正も問題となつた。当初は、一律に少年法の適用を18歳未満としてゐたが、マスコミや、日弁連、多数の元裁判官や弁護士などが反対し、今年5月の改正では、18歳から20歳未満についても「特定少年」といふ変な名称をつけて少年法を適用することになつた。
私は、一律に成人として処遇すべきであると思ふのでこの改正に反対であるが、それはさておく。その改正の際、上記の公職選挙法附則10条も廃止されたので、その結果、選挙人名簿の規定がそのまま適用されることになり、18歳以上の者が裁判員に選ばれることになつた。
判断能力は年齢の問題ではない
この附則の削除があまり議論されずに成立してしまつたので、多くの専門家も気が付かなかつたとして、裁判員年齢を引き下げることに反対する意見がある。確かに、「こつそりと」附則を削除した印象は否めず、18歳の者でも裁判員に選ばれることについて議論がなされなかつたことは、いさゝか問題であるが、私は、未成年者制度は原則として一律に適用すべきであると思つてゐるので、裁判員制度を維持する限りは賛成である。
重大犯罪について、18歳の者が正しい判断ができるかといふ問題については、18歳に限らず、裁判員制度の問題であり、年齢の問題ではない。たゞし、最終的な選任の段階での考慮や適当な訓練や教育は必要である。教育や訓練については程度の差はあるが、選挙権の行使についても同様である。