公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

国基研ろんだん

  • HOME
  • 国基研ろんだん
  • 新型コロナ騒動の総括と至適対策 大木隆生(東京慈恵会医科大学外科学講座 教授・統括責任者)
2022.01.12 (水) 印刷する

新型コロナ騒動の総括と至適対策 大木隆生(東京慈恵会医科大学外科学講座 教授・統括責任者)

本邦でコロナ騒動が起きて間もなく、2020年5月に筆者はいわゆる「大木提言」(PDF)としてコロナ対策を取りまとめ、当時の安倍晋三総理に提出した。その後、個別面談を経て未来投資会議民間議員に就任しコロナ対策に従事したが、提言の骨子は、日本人を含むモンゴリアンは何らかの理由(今で言うFactor X)で新型コロナに強く、感染者数も死者数も欧米に比べて10分の1~20分の1であったパンデミック最初の3カ月間のデータに基づき、以下のようなものであった。

「日本人は新型コロナ抵抗性があるので、白人のデータを中心にまとめられた世界保健機構(WHO)を始めとする海外の提言を鵜呑みにせず、日本独自の感染対策を立てるべき」

「新規感染者数に一喜一憂することなく死者数を抑制するという観点から、重症者数と集中治療室(ICU)充足率に重点をおくべき」

「とは言え、日本の医療体制は脆弱であるので、思い切った財政支援によりコロナ病床を増やすこと」

「第2類指定感染症は、新型コロナにはオーバースペックである上に無用に医療の効率を下げるだけなので5類にダウングレードし、開業医もコロナ診療にも参画できるようにして医療オールジャパン体制を構築すること」

「その上で感染対策と社会経済活動の両立を図るサステナブルなウィズコロナ政策を押し進めること」

これらの施策は2020年8月28日の安倍総理の辞任会見で示されたコロナ対策の基本方針に100%盛り込まれた。

日本は世界初の集団免疫獲得国に

菅義偉内閣でも、この基本方針は継承されたが、いかに官邸が強大な権限を持っていても、新型コロナウイルス感染症対策分科会、医師会、厚生労働省の3組織と、ほぼ全てのメディアが、足並みをそろえて政府方針と正反対のゼロコロナや自粛路線を主張したため、その後、幾度も無意味とは言わないまでも、費用対効果、益と害のバランスが著しく悪い緊急事態宣言、飲食業狙い撃ちと人流抑制を繰り返すことになってしまった。

なぜモンゴリアンがコロナに強いのかに関しては、HLA遺伝子特性を始めとして諸説あるが、これまでのデータから明らかなのは、欧米諸国においては国民の6~7割がコロナに対し易感染性、重症化リスクが高い体質、いわばコロナ虚弱体質である一方、東アジア諸国においてはその比率が1~2割と低いことである。例えばコロナ初年度の2020年の米国の平均寿命は、第二次世界大戦以来となる約2年も短くなった一方、我が国では超過死亡数が戦後初めて減少に転じたという事実は人種によるコロナ致死率の違い以外考えられない。

欧米各国で何度も大きな感染爆発を繰り返す理由は免疫を獲得していない人口比率がなかなか解消できないことを示しているが、それこそコロナ虚弱体質者数がいかに多いかを裏付ける理由でもある。

一方、コロナに強い東アジアの国でも、強力なロックダウンを含む強権的で厳しい感染対策を断行した中国、韓国、台湾、ベトナムなどでは、1~2割しかいなかったコロナ虚弱体質の多くがいまだ未感染のまま残ってしまっているため、新型コロナとの闘いにおいては日本に比べて周回遅れとなっている。

その点、日本はコロナ弱者が少なかった上に安倍内閣と菅内閣の確信犯的な、そしてメディアからは後手と批判された消極的緊急事態宣言や感染対策のお蔭で、コロナ虚弱体質者の多くが第1波から第5波で感染したものと推測される。これによって欧米や東アジア諸国でいまだに史上最多の感染者数を出している中、日本では第5波が2021年8月から9月にかけてパラリンピック、学校再開そして人流が増えたにもかかわらず、急速に収束に向かったのであろう。

つまり日本は世界で初めて集団免疫を獲得し、コロナ禍を抜け出した国であると筆者は考える。すなわち、「大木提言」で示して来たウィズコロナ路線とそれを採用した安倍総理のプランこそが我が国の進むべき道で間違いなかったのではないだろうか。

理解に苦しむ入国制限などの継続

こうしたことを念頭に今回のオミクロン株騒動を俯瞰すると、現在、日本で行っている施策の多くに疑問を持たざるを得ない。

図1:COVID19感染者数推移(100万人当たり、2020-1-11~2022-1-11)

グラフは英国と日本における過去2年間の新型コロナ新規感染者数と死者数の推移を示している(WHOデータベース)。この図1を見て明らかなことは、英国においては感染力の強いオミクロン株により感染者数が激増した事、そしてウィズコロナ政策にも拘わらず減少に転じたことと、対人口当たりで見た日本の感染者数は、メディアでは第6波とセンセーショナルに報道されているものの、2022年1月11日の時点でも英国に比べたら極めて穏やかであるということである。また、日本の第1~4波はあまりに小さく第5波で初めて可視化できるレベルとなった。

図2:COVID19死者数推移(100万人当たり、2020-1-11~2022-1-11)

また図2では、その英国においてですら死者数は全く増えておらず、オミクロン株の蔓延では感染者数と死者数が連動しなくなったことが見て取れる。ちなみに1月8日現在、世界でのオミクロン株感染による死者は累計でわずか40名弱であり、英国で1名、日本においては皆無、ゼロである。日本ではオミクロン株に感染した患者が急速に増えていると言われているが症状のある患者だけをみても、その9割が発熱、倦怠感を主とした軽症である事は忘れてはならない。

感染力は強いが、極めて弱毒性であるために死亡率がほぼゼロのオミクロン株に対して、指定感染症1類(ペスト、エボラ出血熱)と2類の中間的位置づけである新型インフルエンザ等感染症に分類していることは全く現状にそぐわない。その上、無症候性を含む感染者の入院隔離、濃厚接触者の14日間の自宅隔離など扱いが極めて厄介であるため、無用に社会と医療に負荷をかけている。なお、英米仏においてはワクチン摂取済みであれば濃厚接触者の自宅隔離はもとめていない。

致死率が10~30%もある一方で世界の累計の感染者数が数千人しかいなかった中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)と同じ2類相当に分類されているのは全く非合理的である。第5波における医療難民、医療崩壊が人災であったと考える所以である。

また第5波の痛切な反省を踏まえ、開業医がようやくPCR検査機器を導入し、発熱外来を設置するなどして新型コロナとの戦いに参戦したというのに、その出鼻をくじくようにPCR検査と発熱外来の診療報酬を削減すると言う理解しかねる政策も打ち出された。また、政府は現在、入院隔離を基本としているオミクロン株陽性者を在宅での管理を可能にするとの考えを明らかにしているが、第5波でも問題となった保健所のマンパワー不足と訪問診療に対する対策がとられていない。

だから相変わらず感染者数の削減に躍起になるのであり、益と害のバランスが悪い上に効果の定かではない蔓延防止等重点措置(おもに会食制限)を発出したり、既に日本では沖縄の97%、東京の70%はじめ多くの地域で新型コロナはオミクロン株に取って代わられたにもかかわらず、2022年2月末日まではオミクロン・シフトで外国人の入国制限・鎖国の継続をしたりという経済にストップをかける賢明とは言い難い政策を繰り返すのである。

危機的第6波は日本には来ない

前述の通り筆者は2020年5月からウィズコロナ路線と5類へのグレードダウンを訴えていたが、医療提供側においては、ある程度コロナ体制が強化されてきた。新型コロナに対する知識と経験も十分に蓄積され、ワクチンが普及し、経口治療薬も保険適用となった。

感染者のうち重症化リスクの高い60歳代以上の感染者は5~6%にとどまっている。致死率がほぼゼロで罹患した人の多くが無症状・軽症であるオミクロン株の登場で、一層ウィズコロナと5類へのグレードダウンの機が熟したと考える。コロナの完全なインフルエンザ化である。

感染を避けるのに躍起になるのでなく、通常の感染症、通常の疾患として罹患し、症状があったら滞りなく医療が受けられる事、それを国民も望んでいるはずである。ただ、グレードダウンへの国民的理解を得るために、引き続き新型コロナ治療の公費負担は継続すべきだろう。

また、3回目のワクチン接種、いわゆるブースター接種に関しては、東京都の1月9日の発表では、同時期の新規新型コロナ患者でワクチン接種歴の判明した883人の内、ワクチン2回接種済みは617人(70%、いわゆるブレイクスルー)、接種なしが246人(28%)、1回接種は20人(2%)であった。この比率は東京都におけるワクチン普及率とほぼ同一であることから、オミクロン株に対しては武漢株をベースに作成したmRNAワクチンは感染予防の効果がないとみることも出来る。

今、政府は3回目接種に向けて総力をあげているが、感染予防効果はないか、あったとしても僅かだ。もとより重症化しないオミクロン株なので、重症化阻止においてもリスク・ベネフィットが明確ではないワクチン一本足打法以外の策も検討すべきである。

世界的には既にオミクロン株は蔓延がピークアウトした兆候が表れ始めており、日本におけるピークアウトも時間の問題だと推測される。繰り返しになるが、感染症2類に準じた保健所主導、オミクロン株感染者全員の入院、濃厚接触者の2週間隔離など過度の対策を続けるべきではないし、そうしない限り、重症者ベッドが不足するなどの医療崩壊を伴う第6波は日本には訪れないと考えている。

そうこうしているうちに、この感染力は強いが、死亡率はほぼゼロのオミクロン株の世界的蔓延が天然ワクチンの効果を発揮することになり、今回のパンデミックは終焉を迎えると筆者は予想している。

令和の鎖国政策やオミクロン株に対する厳しい感染対策方針を発表するたびに政権支持率が上がったので、岸田文雄総理としても大衆迎合的施策の誘惑にかられる気持ちは理解できるが、国益第一に勇気ある賢明な判断、すなわちサステナブルなウィズコロナ路線をはっきり明言することを願って止まない。