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2022.01.31 (月) 印刷する

安保法制認めぬ立憲民主に未来なし 有元隆志(国基研企画委員、産経新聞月刊「正論」発行人)

立憲民主党は27日、昨年秋の衆院選に関する総括を公表した。共産党との選挙協力に関する報道が相次いだが、根本的な「敗因」は、集団的自衛権の限定行使を可能とした安全保障関連法制への反対が国民から非現実的と受け止められたことだろう。立憲民主党は安保法制容認に転換しない限り、かつては野党第一党だったものの、いまでは2人しか国会議員がいない社民党(旧社会党)と同じ道を歩むことになる。

共産との協力は結党の必然

立憲は衆院選で共産、国民民主、れいわ新選組、社民各党と213の小選挙区で候補者を一本化した。結果は議席増どころか13議席減の96議席に終わり、枝野幸男代表が引責辞任した。

立憲が一本化に際して、野党共闘を呼び掛ける市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」と共産、れいわ新選組、社民の4党で合意したのが、「安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの法律の違憲部分を廃止し、コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する」「平和憲法の精神に基づき、総合的な安全保障の手段を追求し、アジアにおける平和の創出のためにあらゆる外交努力を行う」などとした共通政策の提言書だった。

言うまでもなく日本を取り巻く安全保障環境は急速に悪化している。尖閣有事、台湾有事にいかに対処するかが問われており、米軍との連携強化は不可欠だ。

だが、立憲民主党は前身の民主党時代から2015年の安全保障関連法制に反対し、国会前で“市民”と共闘したことに固執している。2017年の希望の党設立の際、「限定的な集団的自衛権の行使を含め安全保障法制を基本的に容認し、現実的な安全保障政策を支持する」との政策協定書を呑めない議員たちによって結成されたのが立憲民主党だった。

安保法制反対は立憲民主党にとって「一丁目一番地」だったのだ。だからこそ、日米安保廃棄や自衛隊違憲を掲げる共産党と安保法制反対で足並みを揃え、選挙協力に踏み切ることができたのだ。

代表交代でも乏しい危機感

枝野氏から泉健太代表となってもそのスタンスを変えることはないようだ。政治ジャーナリストの青山和弘氏は月刊文藝春秋2月号で泉代表に取材した際、安保関連法制への対応について「政権担当能力が問われているのだから、選挙前に見直す必要があるんじゃないか」と質した。

泉氏の答えは「党の基本方針に則ってこの党があるので、現時点では見直すことはありません。ただ今後、参院選の政策も立案していくので、その中で再検討の議論が起こるかもしれないし起こらないかもしれない」だった。青山氏も「極めて曖昧な回答だ」と批判したが、これではいくら総括しても変わらない。

総括の原案では、党の独自調査に基づき共産党との連携を理由に投票先を立憲民主党候補から他候補に変更した割合が投票全体の3%強となり、接戦区の勝敗に影響があったと分析された。

これに対し、党内から参院選を控えた共産党との改選1人区での候補者一本化調整にマイナスになるとして異論が出たため、この記述は削除された。代わりに野党共闘による候補者一本化への評価が加わった。

逢坂誠二代表代行は記者会見で「野党が大きな固まりとなり、自公政権に対峙できる存在になることを国民は望んでいる」と述べ、1人区での野党一本化の必要性を強調した。その大前提として野党第一党が外交・安全保障政策で現実的な政策を掲げることが必要だ。泉代表は安保法制の容認問題に正面から取り組まない限り、自公政権に対峙できる存在にはなりえないことを自覚すべきだ。

いまのところ、国会での対応も枝野代表時代と変わらない。与党が27日の衆院憲法審査会の開催を呼びかけたのに対し、立憲民主党は新年度予算案の審議中は応じられないと伝えた。国民民主党の玉木雄一郎代表が「いつまでこんな古臭いことを続けるのか。危機感の無さに眼が眩む」とツイートしたが、まさにその通りだ。

立憲民主党は選挙総括では、衆院選の敗因について「存在感を示しきれず、期待値は維新(日本維新の会)に集まる結果となった」と明記したが、このままでは参院選でも同じことが繰り返されるであろう。