7月10日に投開票が行われた第26回参院選挙では自民党が大勝し、野党第1党の立憲民主党が議席を大きく減らした。この結果をめぐって、立憲民主党の最大の支援組織である日本労働組合総連合会(連合)の影響力の弱体化、集票力の低下が指摘されている。その理由として言われているのは、①労働組合の組織率が低下している ②若者を中心に政治的無関心層が増加し、労組内部にも影響が出ている ③連合幹部が自民党に急接近している ④トヨタ労組は前回の衆院選で組織内候補者の擁立を見送った ⑤連合は共産党との共闘に批判的で、それが野党共闘を妨げている―といった点だ。
むしろ高まった労組依存度
これらの点についてコメントは控える。ここで論じたいのは、こうした要素が連合の集票力低下につながったかどうかである。そこで政党の比例獲得票と連合組織内候補者の得票数を見ることにする。今回の参院選結果は前回2019年の参院選と比較して、立憲民主党は114万6000票余り、国民民主党は32万1000票余り減らした。しかし、連合構成組織のうち前回も今回も候補を擁立した10組織の合計得票で比べると、18万票の減少にとどまった。立憲、国民両党の労組票への依存度はむしろ高まった。
連合を構成する産業別労働組合(産別)にとって、参院の比例議席は自らの政治活動をしていく上で特別の意味を持っている。政党支持率の影響を受けるものの、そういう中でも労組票は両党を支え続けたと言える。2020年に立憲、国民両党は一旦解党し、国民の一部が立憲に移り、新立憲、新国民となった。今回、立憲では非労組系議員の落選が多かったのに対し、労組系は5人全員が当選を果たした。国民は3人が当選した。電機連合の候補は落選したものの、15万9000票の得票は落選者の中で最高であった。自動車総連の候補者(トヨタ労組出身)も当選した。基幹労連(日本基幹産業労働組合連合会)とJAM(ものづくり産業労働組合)は3年毎の参院選で候補者を交互に擁立し、前2回は落選したが、今回は立憲から擁立して当選した。
「自民急接近」は誤解
民間企業では、多くはユニオンショップ協定により、企業に採用されれば自動的に組合員となる。その政治意識は一般の若者と変わらない。労組が教育・広報活動などを通じて、推薦候補者の「浸透」を図っている。その結果、比例区の全当選者50人のうち労組系が8人を占めた。この傾向は低下していない。
連合は、自民党も含む与野党(共産党を除く)と政策協議を行っている。これは連合結成以来の行動パターンであり、自民党に急接近しているわけではない。国際労働機関(ILO)原則に基づく「社会対話」によって政策実現を図る行動は、先進国では共通に見られる。社会対話をする上でも、労働組合が国会に議員を抱えていることは有益であることに変わりはない。(了)