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2025.09.16 (火) 印刷する

タイフォン・ミサイルシステムの展開を歓迎 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

米軍が新たに開発した地上発射型の中距離ミサイルシステム「タイフォン」を日本に初めて展開させ、15日、山口県岩国市の米軍岩国基地で報道陣に公開した。11日から実施中の自衛隊との大規模共同演習で、九州や沖縄などの離島防衛を想定した訓練のためとしている。

これまで米国は、冷戦末期の1987年に旧ソ連と結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約により、地上発射型の中距離ミサイルを配備できなかった。それを尻目に中国は中距離ミサイルを大量に生産・配備してきたが、2019年、第1次トランプ政権がINF条約から脱退して、米国も生産・配備できることになった。昨年、既にフィリピンでタイフォンを展開させている。
 

中国大陸も射程内に

タイフォン・ミサイルシステムは、米海軍や海上自衛隊のイージス艦が搭載しているMk41ランチャー(ミサイル発射機)を移動可能な陸上発射型にした米陸軍のシステムである。日本でもMk41ランチャーを「イージス・アショア」として秋田県と山口県の二か所に配備することを計画し、地元への説明を行ってきた。しかし、河野太郎氏が防衛相であった2020年、イージス・アショアは発射後にブースターと呼ばれる推進補助装置の破片が民家に落下するという杞憂から配備を中止させた。この愚かな決定を繰り返すべきでない。

タイフォン・ミサイルシステムは、対空ミサイルであるSM6だけでなく、巡航ミサイル「トマホーク」も発射でき、射程1600キロのタイプであれば、岩国から中国大陸の一部に到達する能力がある。

このため中国外務省の郭嘉昆報道官は8月29日の定例記者会見で配備反対を表明。ロシア外務省のマリア・ザハロハ報道官も同日「地域の安定を損なう」と非難した。しかし、最初に中距離ミサイルを配備して地域の安定を損なう行動をしたのは中露両国なのだ。中国の報道官は反対理由を述べる中で「日本に侵略の歴史を深く反省するよう促す」と言ったが、石破茂首相がこだわっていると伝えられる戦後80年の「見解」発出は、中国の高圧的態度に拍車をかける結果をもたらすのではないか。

OCEAN構想に合致

中谷元・防衛相は、今年2月にフィリピンのギルベルト・テオドロ国防相と会談した際、「一つの戦域(One Theater)」構想を提案したと後日、朝日新聞が報道した。これに対し韓国の複数の新聞が反対する記事を掲載したことから、防衛省としては以後、この構想をあまり口にしなくなった。

代わって中谷氏は6月に英国際戦略研究所(IISS)主催のアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で、インド太平洋のためという視点から、共通の価値と利益を共有し合う諸国(Among Nations)が、協力的な取り組み(Cooperative Effort)を通じ、相乗効果を発揮して一つ(One)の大きな組織としていくという「OCEAN(One Cooperative Effort Among Nations)構想」を提唱した。今年出版された防衛白書では、中谷氏が特にOCEANを強調する巻頭言を載せている。

米軍が東アジアで中露への抑止力としてフィリピンや日本にタイフォン・ミサイルシステムを展開させていく努力はOCEAN構想に合致するもので、日本は米軍の努力を共に具現化していくべきだ。とりわけ陸上自衛隊にとっては米陸軍の同システムを、米海軍と海上自衛隊が統合させているように、陸自システムと統合させる絶好のチャンスとなる。(了)